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アバド/マーラー/ドビュッシー/ルツェルン [DG]

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ドビュッシー:《海》〜3つの交響的素描
マーラー:交響曲第 2 番《復活》

クラウディオ・アバド指揮/ルツェルン祝祭管弦楽団
エテリ・グヴァザヴァ(S)アンナ・ラーション(Ms)
オルフェオン・ドノスティアルラ合唱団
DG 477 5082

 2003 年 8 月 14,19,20 日、ルツェルン音楽祭でのライヴ収録です。従来のルツェルン音楽祭では、レジデント・オーケストラはスイス国内オケの抜粋メンバーで構成されていたようですが、2003 年から音楽監督にアバドを迎え、若手音楽家の育成なども視野に入れた楽団へと作り替えられました。中心メンバーは才気あふれる若手奏者の集団であるマーラー室内管 (グスタフ・マーラー・ユンゲント管の抜粋メンバー) となり、そこにベルリン・フィルやウィーン・フィルなどの首席奏者を加えたメンバー構成となったのです。ま、アバド好みの奏者で固めたということになろうかと思います。

 ケース裏にアバドの指揮姿の写真があるのですが、かなりやつれましたねぇ。いゃぁこんなんでまともな演奏が出来るのかと心配してしまいましたが、音楽を聴いてみると、ふらふらで倒れそうな演奏ではなかったのでホッと一安心。肉体的な音楽づくりではありませんが、ルパン三世のマモーのような脳髄が直接コントロールしているようなダイレクトさがあります。ウィーンとベルリンを兼任していた頃の「心ここにあらず」といった感じの演奏とは違い、細部へのこだわりや繊細さが息を吹き返し、手垢で汚れてないオケを相手にやりたいことをやっているといった感じです。

 ドビュッシーの《海》は、意外にもアバドの初録音ということのようです。録音の影響もあろうかと思いますが、スケールの大きさはあまり感じられません。「海」というより「湖」っつう感じ。その代わりオーケストラ曲としは面白く聴けます。楽器間のバランスに独特なところがあって、普通埋没してしまう音が良く聞こえます (普通聞こえる音が聞こえないということにもなるのですが)。1 曲目のコーダでは金管のファンファーレのために木管の主題が聞こえなくなるのが一般的ですが、アバドは金管を殺してまで木管の主題にこだわります。これだけあからさまなのは初めて聴きました。3 曲目のコーダでも旋律線よりリズムパターンの方を重視して、独特な音風景を見せてくれます。印象派というよりは新ウィーン楽派の先駆けといった感じのドビュッシーです。

 マーラーは、'92 のウィーン・フィルとの演奏と解釈は大きく違わないようですが、演奏時間はそれぞれちょっとずつ長くなっています。内容的には、安定感はウィーン・フィルの方がありますが、面白さはこちらのルツェルン盤の方が遙かに上でしょう。ウィーン盤はフォーカスが甘く、音楽の訴える力をいまいち感じられませんでした。ま、その間延びした感じがなんとも特徴的な演奏なのですが、聞いているのが苦痛でさえありました。ルツェルン盤は引き締まった演奏で、若々しい勢いがあります。アバドも守りに入らず、曲から常に新しいものを発見しようとする積極的な曲作りです。第 5 楽章のマーチ部分ではヴィオラを際立たせており、目新しいバランスを体験できるなど、耳を離せない部分もあります。5 楽章終盤の圧倒的なパワーの解放まで十分聴かせきって、鳥肌ものの凄さがあります。マイベストというほどでは無いですが、聴いて損はない演奏でしょう。一カ所、5 楽章 27'50" のソプラノソロ "O glaube: Du warst nicht umsonst geboren!" をアルトが歌っているように聴こえるのですが、なぜなのかは不明です。

 録音は、聴くには不自由しませんがそんなに良いとは言えません。まず分離が良くないです。またダイナミックレンジを広めにとっており、つまり全体的に収録音量が低めです。しかし、ミキシングでかなり音を詰め込んでおり (あからさまに判ってしまうミキシングではありますが)、必要な音は聞こえます。あまり良くない条件の下、なんとかまとめようと努力した音なのかもしれません。

 この演奏からはアバドが徹底的に自分を満足させるための音造りをしているように聴き取れます。どのような音を得たいのか、またどのようにすれば得られるのかを十分心得ており、そして確実に成功しているようです。脳髄が直接コントロールしているとは書きましたが、現実問題としてオケをドライブするのはもちろん肉体です。体力を経済的に使っているのでしょうが、スピードやパワーで物足りなさは感じません。これだけエネルギーを発散出来るのなら、まだまだ活躍を期待できそうです。余計なものが削ぎ落とされ残った結果がこの演奏なら、私はこれからもアバドを期待しようと思います。

  
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2004年9月 7日 17:20

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