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マーラー:交響曲第 9 番/アバド [DG]

abbado_Mahler9.jpg

マーラー:
交響曲第 9 番

クラウディオ・アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
DG 471 624-2

 以前ここで録音を滅茶苦茶貶したアバドのマーラー 7 番ですが、某誌のオーディオのコーナーではあんな冗談じゃない録音を良い録音として評価しているようで、罪作りな雑誌だと改めて思いました (しかし、…聴こえないのかなぁ)。今度の 9 番も心配だったのですが、7 番ほど酷くなく一安心しました。が 3 番ほど良くもありません。

 私の聴いたことあるアバドのディスクのなかでは、ウィーン・フィルとのマーラー 9 番とベルクの《ヴォツェック》が格別に素晴らしい演奏だと思っているので、新しい BPO との 9 番が果たして VPO 盤を越えられるのかが最大のポイント。この BPO との新譜を聴いたときの第一印象は、なんて荒削りな演奏なんだというもので、VPO 盤の柔和で安定感があり色香の漂う演奏に惚れていた耳には雑な演奏にしか聴こえませんでした。ベルリンとの荒削りなマーラー 9 番と言うと、唯一回の客演で圧倒的な演奏を披露したバーンスタインの演奏を思い出しますが、アバド/ベルリンはあそこまで壊れてないし、あれほどまで極度な演奏でもありません。基本的な解釈は VPO 盤の延長線上ですし、こりゃ VPO 盤を越えてないわと思いました。

 しかし 4 楽章まで聴き進むとその印象は一変します。抽象的な表現ですが、音に VPO ほどの密度が無いとネガティブに感じていたものが、解放的に迸る凄まじい流れがそこにあること、たとえ密度が少なくともその分流れが早ければ総量としては同じということに、ようやく気付いたのです。弦楽器のこの音響はまるで洪水のように勢い良く、圧倒的パワーで聴く者を呑み込みます。ただ単に鳴りが良いだけでないこのスピード感ある音は、実に輝かしく、緊張感と開放感を同時に味合わせてくれ、4 楽章全体に、前向きな明るさ力強さというものを感じました。金管が鉄槌を下した後のヴァイオリンが裸になる悲痛な叫びの後の決然とした下行音形に、希望とも呼べる強さを感じたのは初めてです。中間にある、波が引いた後の余韻のような木管アンサンブルの静謐さも美しく引き立ちます。それに終盤の消え入るようなシークエンスも、風前の灯火というよりは、途切れない波動の上で明滅しているように穏やかに流れており、充実したコーダでありました。

 ここでもう一度両盤を聴き直してみると、VPO 盤は計画的に見通しよく余裕の天才肌な演奏で、整理され判りやすく安心して聴けるものの、かえってそれが物足りないと感じなくもありません。アバドの掌の上ではあるもののあくまでも "ウィーン・フィルのマーラー" であり、その一点においてのみ最大の魅力なのです。方や、BPO 盤は攻撃的で出たとこ勝負、抑えること知らずで鳴らしまくっており荒っぽく聴こえるのですが、アバドの要求に応えた上での自発的撥露であり、ボルテージの高さと完成度の両方を兼ね備えている点で群を抜いています。但し陰影は深いのではありますがモノトーン調で、色彩感や説話的雰囲気は乏しいと思います。例えば 3 楽章のトリオの部分のトランペット・ソロがちょっと生々しく、別世界へ誘ってくれなかったりするのです。そういう点では、VPO 盤が秀でていると感じます。いずれにせよ、アバドがオケの自発性を尊重するあまり、オケが変わればほぼ同じ解釈でもこれほど毛色の違った演奏になるという、再録の価値十分の一枚でした。

 この CD、なんと 81'03" の収録時間で、古いプレーヤーだと最後までかからないかもしれません。にも関わらず演奏後の静寂と大歓声が 1'58" も入ってるという、そういう意味でも恐るべきディスクであります。

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2002年7月10日 11:29

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