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ショスタコーヴィチ:交響曲全集/バルシャイ [BRILLIANT]

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ショスタコーヴィチ:
交響曲全集

ルドルフ・バルシャイ指揮
ケルン WDR (西部ドイツ放送) 交響楽団
BRILLIANT CLASSICS 6324/p>

 11 枚組みで 3,000 円程と超ハイ・コストパフォーマンスな全集でお買いになった方も多いと思います。私も以前から目を付けてはいたのですが、あまりに廉価すぎてちょっと危惧するところもあり手を出さずにいたのですが、ついに税込み 3,000 円を切ってしまっていたので買ってみました。

 バルシャイはショスタコーヴィチに作曲を師事し、交響曲の初演や、弦楽四重奏曲の室内交響曲への編曲などで知られている指揮者です。ショスタコーヴィチにもっとも近いところにいた指揮者だからといって、ロジェストヴェンスキーのようなこてこてのロシア訛な演奏をする訳でなく、モダンで洗練された演奏を聴かせてくれます。同じくショスタコーヴィチを体の一部と感じているであろうロストロポーヴィチよりも、数段素晴らしい演奏です。バルシャイの解釈はオーソドックスで、作曲者と親交があったバルシャイでしかなし得ないものが聴けるという訳ではありませんが、そういうバイアスは逆に邪魔なくらい純交響的な演奏。灰汁の強い演奏を期待すると裏切られます。それぞれ最上の演奏とは言い切れませんが、全集としてはかなり高いレベルでまとまっており、総合的にはハイティンクの全集よりも上まっている部分もあります。

 第 1 番:管弦楽の面白みを出しつつコンパクトにまとまった効果的な解釈で、バーンスタイン/シカゴ響の演奏を彷彿とさせます。ところどころアンサンブルが乱れたり、3 楽章のヴァイオリン・ソロがいまいちだったりしますが、全体としては素晴らしい演奏です。

 第 2 番:アンサンブルの大混乱を心配しましたが、危ない箇所はあるものの意外と堅牢でした (^^;。あまり祝祭的な雰囲気ではなく、地味ながら力強い演奏です。サイレンは消防車のウ〜〜って感じでした。2 番と 3 番それぞれ 1 トラックなのが不便。

 第 3 番:これもオーソドックスな演奏だなと思っていたら、主部の途中からじわじわとアッチェレランドしており、かなり扇情的な演奏になっています。表情豊かというよりは一直線。熱演ですが、一面的な演奏に思います。合唱が入ってからも、速いテンポでせこい印象を受けます。

 第 4 番:ミュン・フン、ラトル、プレヴィンなどの名演に比肩しうる演奏です。しかしそれらの演奏の最大公約数的な内容で、特に個性や抜け出たところなどは感じませんが、必要なことは必要なだけやっており、かなりの秀演ではあります。

 第 5 番:この曲の仮面を剥がしてやろう的な解釈ではなく、いたって真っ当な演奏。オケも演奏し慣れているせいか完成度は全集中でも高く、実に安心して聴いていられます。5 番はこの位の中庸さが一番しっくりくると思います。

 第 6 番:1 楽章から濃厚で迫力のある緊張感に富んだ演奏が繰り広げられます。バルシャイの控えめな緩急の付け方も、この曲のストイックな面に相応しく素晴らしいです。中間部のフルート 2 本によるソロの部分など、マーラーの《大地の歌》にも通じるものを感じさせます。19 分がアッという間でした。2 楽章はかなり早く攻撃的な演奏。やたらカッコ良いです。3 楽章は前 2 楽章に比べると普通の演奏ですが、後半の Tutti で盛り返し、まとめております。

 第 7 番:この曲はバーンスタイン/シカゴ響の怪演があるので、どうしてもそれとの比較になってしまいますが、やはりオケにあそまでの凄みは出せませんでした。バルシャイの解釈がバーンスタインと同じ方向なだけに、なおさら感じます。まあこれは比較する相手が悪いのです。これはこれでひたむきな演奏でオケも充分それに答えているのですが、そのひたむきさが悪い意味で若い演奏に聴こえてしまいます。

 第 8 番:残響の多い録音も相まって、スケールの大きな演奏になっています。1 楽章では息の長い旋律が綿々と続き、一筆書きの力強さと緊張感があります。2,3 楽章はもう一声メリハリが欲しいところですが、不満なほどではありません。カデンツァのような 4 楽章は充分存在感のある演奏。終楽章はもうちょと細かい起伏が出ると面白いのですが、やや大味になってしまっています。

 第 9 番:ショルティの演奏に似て新古典的解釈。かっちりした演奏で管弦楽の面白みを引き出し、指揮者でなく作曲者に語らせる演奏です。オケの迫力や完成度においては当然ショルティの演奏より劣りますが、方向としては良く、なかなかの演奏です。終楽章が弛緩気味で緊迫感の出現が遅いのが残念。

 第 10 番:オケが変わったんじゃないかと思えるほどオケの有機性が増し、この全曲盤の中でも最高のパフォーマンスを繰り広げています。10 番は数多くリリースされている割には満足できる演奏が少ないのですが、その中でもトップクラスに相当する演奏内容と思います。曲が求める以上に派手にならず、地味で渋い演奏ですが、頭の上に蓋をされたような圧迫感があり、一番最初にこの曲を聴いたとき感じた何気ない奇妙さを、久しぶりに感じさせてもらいました。ただ地味なだけでなく、スケール感もあり、2 楽章の破壊力も十分です。これ 1 曲で 1,700 円位の価値があるでしょう。

 第 11 番:ハイティンクのように筋肉モリモリでないし、ヤルヴィのように急性的でないし、ロストロポーヴィチのように遅くしすぎて底が抜けるような失敗はしてないし、アシュケナージのように感情だけで振ってない、実に良い線を突いた演奏。しかしアンサンブルの乱れが気になる部分も結構あります。肝心の 2 楽章の銃撃シーンはセンセーショナルさは少ないものの丁寧に作り上げており上出来です。ハイティンクとバルシャイの中間くらいの演奏があるといいのだが。

 第 12 番:この曲はもともと当たりはずれの少ない曲で、最後はオケの体力勝負かなという作品ですが、WDR 響も良く鳴らしており満足できます。下手をするとアニメ調になってしまうこの曲ですが、WDR 響の渋い音調のおかげで安っぽくならずに迫力を出しています。しかし圧迫感や開放感などを喚起することはあまりなく、無表情な演奏だと思います。あまり喜怒哀楽を見せないのがバルシャイ流のようです。

 第 13 番:1 楽章の「バビ・ヤール」から何か安っぽい音で、ロシアの歌謡曲を聴かされている感じがします。ノリが派手というか、なんか元気な演奏で戸惑います。健康的とまではいってないのが救いですが。音が強く固く、第 4 交響曲向きなギラギラした演奏で、もうちょっと力を抜かないとこの曲の持つバイタリティーや色彩感が出てこないでしょう。これは響きの少ないオンマイク気味な録音のせいもありそうです。力を内に秘めた「商店にて」と「恐怖」は、緊張感ある良い演奏です。

 第 14 番:ゴツゴツした演奏で洗練さは少なく、録音も荒削りで繊細さを欠いた音です。しかしその岩のような無機質さが、徹底的に荒涼として貧しい雰囲気とヒステリックな力強さを浮き彫りにしているとも言えるでしょう。熱のこもった濃い演奏です。室内楽的な演奏が好みの人には不向き。

 第 15 番:風刺性はほとんど無く、変に深読みをせず楽譜をストレートに音にしています。こういう演奏はオケの機能性が最大の要となるのですが、見事!と思えるアンサンブルではないものの、真剣勝負の緊張感がひしひしと伝わってくる敢闘賞ものの演奏です。まあそれでも外さないでくれよと思いますが。4 楽章冒頭のワーグナーの引用が、インテンポであまりワーグナー的にしていないのがバルシャイらしく面白いと思いました。

 以上かなり褒めちぎっているように書いてしまいましたが、アンサンブル・録音・ジャケットデザインなどどれをとっても B 級な出来というが大前提での評価であります。かく言う私も、最初に 14 番を聴いたせいかもしれませんが、これはハズしたと思いましたもの。しかし 10 番の演奏が気に入ったので、他も改めてじっくり聴き返してみたら、これは案外侮れない演奏だぞと思うようになりました。ちょっと音を外しても、ずれても、事故として許容範囲ですし、それ以上に演奏内容に水準以下のものがなく、全て必要十分条件を満たしている内容だと思いました。でもこんなに褒めるつもりは無かったですが、違う演奏と色々聴き比べてみると情けない演奏が多いのに改めて気づかされ、バルシャイの平均的な演奏それ自体が凄いと思ったのです。もしこれでプラスαの要素が加わればそれこそ凄い全集になるのですが、ともかくショスタコーヴィチ演奏の合格ラインとしてこの全集を持ってこれる、そんな演奏だと思います。全集として大お薦めです。3,000 円で買えるのですから (^^)。

2002.6.7/15

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2002年6月 7日 11:29

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