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シャイー/コンセルトヘボウ 放送録音ライヴ集

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リッカルド・シャイー/ロイアル・コンセルトヘボウ
放送録音ライヴ集

リッカルド・シャイー指揮
ロイアル・コンセルトへボウ管弦楽団
RNM MCCM 97033

 RN (ラジオ・ネザーランド) Music より発売された、シャイー/ロイアル・コンセルトヘボウの放送録音集 BOX セットです。1985 年のコンセルトヘボウ・デビュー当時の録音から 2003 年のコンサートまでを、オランダ公共放送の番組を製作している ARVO, NOS, TROS, KRO 提供の音源から、CD 13 枚と DVD 1 枚にふんだんに収録しています。ここの会社は過去にもハイティンク/メンゲルベルク/ベイヌムらのコンセルトヘボウ放送録音集などを出しています。

 私はあまりシャイーは聴かないでいたのですが、収録曲の魅力で買ってしまいました。収録曲はバラエティに富んでおりますが、ストラヴィンスキーとベリオが 5 曲づつ入っているなど、どちらかというと近現代の作品が多いという点に惹かれました。収録曲は最後に記載しておきます。

 まず気になる音質ですが、放送用音源といえどもかなりクオリティの高い音がしています。製作会社の差や、録音年代の違いなどあまり感じさせません。マスターリングで揃えているのか、それとも共通した機材を使っているのか。このコンビはデッカの録音で聴くと、見通しの良さと、プリプリとした派手目な爆裂系の音という印象なのですが、RNM 盤ではもうちょっと大人しくなり、適度なホールトーンの御陰で全体的に非常に心地よいバランスの音として聴こえます。おそらく実際のホールで聴く音は RNM 盤の方が近いのでは。デッカほど高解像度ではありませんが、抜けの良さ、分離の良さは十分感じられ、さらにふくよかさがあるので、デッカの人工的な嘘っぽさがなく自然な音になっています。地味ながら良い録音のものが多いと思います。全て一発録りだろうから、変にいじってないのが良いのかもしれませんね。会場ノイズも臨場感あります。演奏のキズも少ないのは流石。

 まずストラヴィンスキーの《火の鳥》《プルチネッラ》《春の祭典》というなかなかの好選曲の DVD ですが、仕様がちゃんと書いてないので、ここに書いておきます。リージョンはおそらく ALL。NTSC の16:9 収録。片面 1 層。音声は Dolby Digital 2ch。オーサリングとしては最低限でメニューが一枚あるだけ。チャプターも一作品で 1 つと大ざっぱ (《春の祭典》は 1 部、2 部は選択できる)。3 曲続けて見れず、1 曲終わるとメニューに戻ります。ビットレートも 5Mbps 台で余り高くなく、画質はまあまあです。

 普段からそうなのか、それとも TV 用の演出なのか、ホリゾンタル・ライトの役割を果たすパイプオルガンを照らす照明が紫がかっており、怪しい雰囲気です。曲調に合わせて色が変わったらどうしようと思いましたが、流石にそれはありませんでした (^^;。それでもアンドレ・リュウとかじゃないんだから、自然なライティングにして欲しかったです。カメラは下手側に長いクレーンがあって、木管のクローズショットから徐々にトラックバックし打楽器後方まで回り込んでみたり、もの凄い高い位置からオケを鳥瞰してみたりと、ヒッチコックも顔負けのカメラワークを見せて、楽しめます。

 演奏はなかなか良いです。シャイーのあんなスピード感のない鈍い棒から、どうしてこうも多彩な表現が出来るのか不思議なくらい。ま、奏者はほとんどシャイーを見ていないですからね。視野の片隅に入っているだけでしょう。どんな状況でも的確に対応でき、しかも自分たちの音楽を失わない、素晴らしいオケだなぁと感心してしまいます。音だけ聴いていると普通の演奏なのかもしれませんが、映像を、それも奏者中心のモンタージュで見せられると、迫力と緊張感をひしひしと感じることができ、臨場感たっぷりです。

 CD の方は全部の感想を書いている訳にもいかないので、気が付いたものを。

 チャイコフスキーの第 1 交響曲は、コンセルトヘボウの色彩感が大いにものを言って、良い演奏になっています。歌い方やスケール感など、十分聴かせる演奏です。リームの《黒と赤の踊り》は初めて聴きましたが、音楽が面白い。こういうリズム中心の曲好きです。演奏は悪くないですが、オケは若干投げやり的かも。でもそういう良い意味での "がさつさ" が味な演奏。シロモ・ミンツが独奏を務めたバルトークのヴァイオリン協奏曲第 1 番ですか、オーケストラの色彩感も相まって、あまり辛気くささを感じさせない名演。ミンツのヴァイオリンも安心できます。

 マデルナの《フランツ・カフカ『審判』による習作》は、どのサイトを調べても "カフカの『経過』" となっていたので、何だそれはと思っていました。"Il Processo" は確かに「経過」という意味だが、日本じゃ一般的に『審判』と訳されている。審判であると共に、単なる経過でしかないというカフカのアイロニー。マデルナの音楽は半オペラ的で言葉が重要な要素になっているので、言葉が判らないと面白くない。

 バーンスタインの《セレナーデ》は、いまいち切れ味の悪い演奏で、バースンタインの自演盤を超える感じでは無かったです。録音も打楽器のエネルギーに翻弄され、きっちりと音楽を捉えていません。ベリオの《フォーク・ソングズ》は音楽的にも親しみやすく、演奏も良い雰囲気をだしています。ヤルド・ヴァン・ネスの独唱も見事。この BOX の中でもかなり印象的な演奏でした。《2 台のピアノと管弦楽のための協奏曲》も曲の面白さに引き込まれていく演奏でした。リン・ハレル独奏のショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第 2 番ですが、けれん味の無い演奏と遠めの録音のため、割と平凡な演奏に聴こえます。録音が良ければもうちょっと良く聴こえるとは思うのですが。

 プロコフィエフの第 3 交響曲は DECCA 盤も持っていますが、ライヴ盤の方は遅めな曲作りになっています。雰囲気としては良いかも。どちらにせよ、派手な音響の割に重苦しい音楽というコンセプトは変わりません。アルゲリッチが独奏のピアノ協奏曲第 3 番は、1 楽章はまだいいものの、2,3 楽章でテンポがぶつかる部分が多く、危険なシーンが多いです。アルゲリッチの音も明瞭すぎて、ちょっと興ざめします。早い部分に無理なアゴーギクを入れてくるのもかなり怖い。しかし決定的にずれたと思った瞬間にピタリと修正される様は、イリュージョンを見ているようでかなり感心します。

 ウェーベルンの《パッサカリア》とシェーンベルクの室内交響曲第 1 番は、どちらも素晴らしい出来です。特にシェーンベルクは、音楽の勢いや緩急の付け方、少人数による有機的なアンサンブルなど見事で、スコアを見ながら何回も聴いてしまいました。 ベルクのピアノ・ソナタの管弦楽編曲版ですが、この曲は初めて聴きました。ファーベイによる編曲ですが、もともとベルク自身が管弦楽作品として書いた曲のごとくしっくりとしています。《ヴァイオリン協奏曲》は、華奢な印象の演奏が多い中、シャイーの演奏は骨太です。かといって無骨な訳ではなく、全員が曲を熟習して確実な表現をしている為でしょう。聴き応えのある演奏です。

 ストラヴィンスキーは《ペトルーシュカ》(1947版)と《アゴン》が収録されており、DVD と合わせるとかなり充実した選曲となっています。シャイーのストラヴィンスキーは音楽的な中身より色彩感や歯切れの良さが特徴的な演奏で、鈍くさいところもあるのですが、それがシャイーらしさというとこでしょう。《アゴン》は若干重たい演奏です。

 贅沢にもマーラーの 8 番全曲が入っていますが、演奏自体はもったりしていて私の好みではありませんでした。オケの色彩感などかなり良いのですが。第 2 部はまだ聴けます。トラックが全然分かれてないのもつらいところ。

 ここには書かなかった曲も多いですが、どの曲もベスト 1 な演奏という訳ではないながら、5 本の指には入ろうかというほど安定したクオリティを誇るものでした。特にシャイーが好きでなくとも、この手の選曲が苦手でないなら、十分楽しめて満足できるセットであると思います。CD 13 枚と DVD で 13,000 円程度と、かなりお買い得なボックスと思います。


・ヴェルディ:《運命の力》序曲
・ベリオ:2 台のピアノと管弦楽のための協奏曲、レクイエス、フォーク・ソングス、フォルマツィオーニ、コンチェルト II
・チャイコフスキー:交響曲第 1 番《冬の日の幻想》
・リーム:黒と赤の踊り
・バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第 1 番
・ベートーヴェン:交響曲第 2 番
・ムソルグスキー:《死の歌と踊り》
・ツェムリンスキー:《人魚姫》
・マデルナ:フランツ・カフカ『審判』による習作
・マーラー:亡き子をしのぶ歌、交響曲第 8 番
・バーンスタイン:セレナーデ
・ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第 2 番
・ドビュッシー:バレエ《カンマ》
・ケウレン:《ティンパン》
・プロコフィエフ:交響曲第 3 番、ピアノ協奏曲第 3 番
・シャット:《天国》 12 の交響的変奏
・ウェーベルン:パッサカリア
・シェーンベルク:室内交響曲第 1 番
・ストラヴィンスキー:《ペトルーシュカ》(1947)、《アゴン》
・ベルク:ピアノ・ソナタ(管弦楽版)、ヴァイオリン協奏曲、7 つの初期の歌
・ディーペンブロック:《大いなる沈黙の中で》
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第 14 番
・ヒンデミット:室内音楽第 2 番
・ケウリス:オルガン協奏曲
・ワーグナー:《神々の黄昏》から「夜明けとジークフリートのラインへの旅」
・ブルックナー:ミサ曲第 3 番
・ヴァレーズ:アメリカ

DVD
ストラヴィンスキー:《火の鳥》組曲(1945)、《プルチネルラ》、《春の祭典》

関連記事を検索: アルゲリッチ ウェーベルン コンセルトヘボウ管 シェーンベルク シャイー ショスタコーヴィチ ストラヴィンスキー チャイコフスキー バーンスタイン バルトーク プロコフィエフ ベリオ ベルク マーラー マデルナ

2004年10月 7日 09:11

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