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ストラヴィンスキー:《春の祭典》、スクリャービン:法悦の詩/ゲルギエフ [Philips]
ストラヴィンスキー:
春の祭典 (34'54")
スクリャービン:
法悦の詩 (20'26")
キーロフ歌劇場管弦楽団
PHILIPS 468 035-2 [55'20"]
1999 年 7 月 24-27 日、バーデンバーデン、祝祭劇場での録音。
かなり話題になっていた(というかそれだけ宣伝に力をいれていたと言うべきか)盤だったので、期待して聴いてみたのだが、正直な感想、そんなに凄いのかなぁと疑問に思う内容であった。
まず、録音が変だ。位相が逆なんじゃないかと思えるほど不自然な広がり方をする。中抜けしているような音でもあるのだが、補助マイクによる直接音がミキシングされているおかげでまだ聴ける。しかし楽器が近いのか遠いのか、定位もあるんだか無いんだかで不自然(生演奏の感覚に近い?)。また低音の残響が凄く、2 秒ほど轟くような飽和的な残響音が後を引く。この残響音もミキシングで付加されているようだ(途中でレヴェルが変化しているし)。この手の音は本来好きな私だか、これに限っては超現実的に聴こえ、不自然すぎる。しかしこの不自然さはこの録音の特徴とも言える。音場は再生するだけでなく、創生もされるものなので、そういうユニークな音場だと受け入れてしまえば、悪い音ではない。だがしかし本物とは思えない。
演奏は、最近ありがちのスピーディーで切り込みが鋭く洗練された《春の祭典》とは正反対で、ドロドロしてしてねちっこくて野性味溢れる演奏。解釈としは一昔前のものだが、その時代とは比較にならないほど指揮者・オーケストラ共にこの曲に馴染んでいるため、表現が格段に豊かになっており、新しさすら感じる。がその表現の根底に、わざとらしさというか、新しい時代の《春の祭典》をつくってやるんだという鼻息の荒さが聞こえるようで、何となく抵抗を感じてしまう。どうも "正統派のストコフスキー" と呼んでしまいたくなる、山師的な印象に通ずるものを感じるのだ。印象だけで評価しては悪いので、具体的な部分にも触れると、ともかくこの演奏、主旋律が弱い。内声やリズムなどを効かせようという狙いからなのか、それとも結果的に埋もれてしまったのか判らないが、カラオケの伴奏だけを聴いているようで物足りない。おかげで普段聞こえないような音が聞こえるという面白みはあるものの、あくまでも主役あっての脇役なので、物珍しいサウンドという以上の効果は無い。この辺がピシッと決まったなら、なかなか迫力ある演奏になるのだが。また、最後のパウゼが長いということは何処かの記事を読んでいて知っていたのだが、最後の一撃とその音の前にある装飾音をセパレートしているものだとばかり思っていた。そういう演奏は何度か聴いたことがある。しかし実際はその前の木管の上行スケールの後に長いパウゼがあり、装飾音と次の一拍目は普通であった。確かにこれは珍しい。だけどやはり、他と違った演奏を狙うが為のわざとらしい演出に聞こえてしまう。全体的にも演出過多で、バレエとして踊ることはもはや不可能だろう。
どうも何もかもが嘘っぽく思えてしまう演奏だが、これは初めて聴くゲルギエフなので、彼の芸風に戸惑いを憶えたせいかもしれない。何曲か聴いて彼の芸風を飲み込めてしまえれば、すんなり受け入れられるのかも知れない。
カップリングのスクリャービンは、スクリャービンというよりプロコフィエフ的な演奏で、あまりスクリャービンを好んで聴かない私でもなかなか楽しめる演奏であった。しかし超現実的な録音が細かい音を的確に拾わず、全体的な雰囲気作りに終始しているため、ディティールの変化があまり印象に残らず、結局まったりとして単調なスクリャービンとなっており残念である。
2001年9月25日 23:42
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