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ストラヴィンスキー:《三楽章の交響曲》《ハ調の交響曲》他 ギーレン [hänssler]

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ストラヴィンスキー:
三楽章の交響曲
ハ調の交響曲
詩篇交響曲

ミヒャエル・ギーレン指揮
南西ドイツ放送SO.、WDR ケルン放送Cho.
hänssler CD 93.183

 期待の 1 枚でしたが、ちと微妙。

 まず《三楽章の交響曲》ですが、音が充分出ており迫力があります。ツボにはまるテンポより少々遅い感じの演奏ですが、但しその分がっちりした音を出しており、硬質な印象を受けます。それはこの作品の雰囲気にはマッチしており、キレを重視した演奏が多い中、独特の雰囲気を持っております。ガツンとした部分は良いのですが、例えば第 1 楽章、バルトークが《弦チェレ》で模倣したピアノと弦楽器によるリズミックな部分など、ジャズ風の語法をまぜビート感を強調して欲しいとこですが、そういう点ではノリの悪い演奏ではあります。終楽章のコーダなども楽譜通りすぎて、格好良さが出てません。またストラヴィンスキー的な洒落た雰囲気もあまりありません。そういう意味では、ヒンデミットを聴いているみたいな演奏です。

 ギーレンのテンポ設定にも問題があるように思います。第 1 楽章再現部の第 2 主題の途中、なんの脈絡もない部分で突然テンポが上がったりします。こんなに遅くするつもりじゃなかったと、ふと思い出したみたいに。前後で音場感が変わったようにも思えるので編集が原因なのかもしれませんが、全体を通して音楽に集中してないように思えるので、なおさら印象が悪いです。第 2 楽章は遅めのテンポがしっくり来るので悪くないのですが、第 3 楽章はまたなんの発想もないまま音にしたような演奏。ともかくギーレンがこの曲からどのようなものを引き出したいのか、よく見えない演奏でした。

 しかし録音の関係もあるでしょうが、この高コントラストの輝かしい音響は、地味な印象のこの作品を魅力的に引き立てるものです。音が沸き立ち弾けている様が、明るいスポットライトで照らし出されております。この印象はまるでシノーポリの演奏のようで、私的にはギーレンというよりシノーポリのストラヴィンスキーと言って聴いた方が納得できる感じです。アンサンブルも明瞭で音の分離も良く、見通しが良いのも利点で、少々リズムがぺったりしていてもそちらで補えるでしょう。

 《ハ調の交響曲》も遅めのテンポながら、第 1 楽章はレガートを多用して独特のスタイルを形成しているので面白く聴けます。どっしりしていて、しかも重くないという表現は、なかなかユニークです。しかし全体としてテンポが安定しないように聴こえ、どうもしっくりとこない部分もあります。テンポが変わる事自体は別に良いのですが、計画性があまり無いというか、狙ってやっているというより集中力が途切れて緩んでしまったように聴こえるのです。その辺の問題は《三楽章の交響曲》と同じで、音楽的なメリハリに乏しい演奏に聴こえます。いえ、強弱や激しいアクセント、テンポの緩急は存在するものの、ただそれだけに終始しているようにしか聴こえません。そういった変化の原動力たるビジョンが見えてこないのです。全体として、背骨のないダラリとした "くらげ" のような音楽に思えます。良く言えば牧歌的。モーツァルトの交響曲第 40 番のパロディーからきた発想でしょうか。純交響的アプローチなのかもしれませんが、それならもうちょっとカッチリした構成感というものが聴きたいです。

 《詩篇交響曲》は良い演奏です。冒頭のホ短調の一撃から mf なのに ff 位の勢いがあって、目が覚めます。テンポも、一般的な《詩篇交響曲》のテンポで、安心して聴けます。1 曲目の詩篇 38 番は、カルミナ・ブラーな的な曲だと思っていたのですが、ここではオスティナートがミニマルっぽくて、マイケル・ナイマンのようにも聴こえています。2 曲目の詩篇 39 番は、冒頭のオーボエとフルートのフーガが、機械的な演奏で面白い。1 音ずつはっきりと演奏しているので、フレーズや対位法がはっきりと判り聴き応えあります。3 曲目の詩篇 150 番も優れた演奏ですが、中間部の激しい部分と両端の静かで宗教的な官能美を味わえる部分との差があまり無く、また後半での肝心な合唱の和声がつぶれており、雰囲気は良いものの、和声的な快感を味わえないのが残念な演奏です。

 録音は、《三楽章》が 2003 年 3 月 25, 26 日、《ハ調》が 2006 年 5 月 2-4 日、《詩篇》が 2005 年 12 月 7, 8 日 フライブルク、コンツェルトハウスでの収録。残響音が豊かで、目映いばかりのハイコントラストな音質。特に《ハ調》が一番ウエットで派手な音響です。但し《ハ調》ではマイク近くでの何かのノイズが頻繁に聞こえます。《三楽章》は弦楽器の配置が特殊で、ヴァイオリン対向配置なのですが、下手側から Viol.1, Vle., Vlc., Viol.2 と並び、Cb. は上手奥になります。基本はモダン配置なのにヴァイオリン対向になっているのが面白い。左右ヴァイオリンの掛け合いとかはっきり判り、効果的です。《ハ調》は一般的なヴァイオリン対向配置になります (つまり Vlc., Cb. は下手側)。ちなみに《詩篇》は、低弦しか使われてないので、対向配置とか関係ありません。

 音は良く出ており派手な演奏なので、その点では聴いていて気持ちいいのですし、独特の雰囲気も魅力的ですが、テンポの安定感に締まりのない演奏なのが、ストラヴィンスキーには致命的ではないかと思いました。何度も聴き直して、そんなに悪くないかなぁと思えた時もあったのですが、結局その印象は持続できませんでした。しかしまあ、これは私の価値観でしかなく、私の思う欠点を全然欠点とは思わなくとも結構なわけなので、最終的にはご自分の耳で判断なさって下さい。最近あまりネガティブな意見は書かないつもりでいるのですが、それでも取り上げたのは、無視するのは勿体ない、ストラヴィンスキーの交響曲が好きな人なら持っていて損はない演奏ではあると思ったからです。

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ストラヴィンスキー:三楽章の交響曲/ギーレン,南西ドイツ放送SO.

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2006年10月16日 16:52

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