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マーラー:交響曲第 2 番《復活》/キャプラン [DG]

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マーラー:
交響曲第 2 番《復活》

ギルバート・キャプラン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ラトニア・ムーア (s)、ナージャ・マイケル (ms)、ウィーン楽友協会合唱団
DG 474 380-2

 2002 年 11〜12 月、ウィーン、ムジークフェラインザールにて収録。

 指揮者のギルバート・キャプランはマーラー 2 番専門の指揮者。1965 年にカーネギーホールでストコフスキの指揮によるマーラーの《復活》を聴き、魅せられ、いつかは自分でこの曲を指揮をしたいと思ったアメリカの実業家。普通の人なら「思った」だけで終わるのですが、キャプランは夢を実現するために指揮法を学び、オーケストラと合唱とソリストを雇い、自身の指揮により《復活》の演奏会を実際に行ってしまいました(このときの聴衆は友人知人だったようです)。と、これ一回きりなら金持ちの道楽と言われますが、この後もショルティに師事したり、各地のオケで着実に演奏回数を重ね、1987 年にはロンドン交響楽団を指揮した CD まで発売されます。メジャー・オケへの客演もこなし、ザルツブルグ音楽祭にまで出演しました。指揮者としてのキャリアだけでなく、マーラー研究者としても実績を残しており、今回のレコーディングも自身の手による新クリティカル・エディションを用いています。

 キャプランは自身の演奏過程で持ち上がる楽譜上の問題点をクリアすべく、音楽学者のレナーテ・シュタルク=フォイトと協力して新校訂版の計画を立てます。ウィーン、ミュンヘン、ニューヨークなどに散らばる 14 ものマーラーの自筆譜を参照し、数百ものミス (間違った音、消された音、間違った楽器に割り振られた音、間違ったテンポ、不正確なダイナミクス、間違ったアクセント、位置の違うクレシェンド・ディミヌエンド、指揮者・合唱・ソリストへの判りにくい指示など) を直しました。この新校訂版は国際マーラー協会からもお墨付を貰い、2005 年に出版されます。

 新校訂版の資料収集のためにウィーン・フィルへも照会を行ったという経緯が、後にウィーン・フィルがその校訂版はどうなっているかとの問い合わせへと発展し、実物を見たウィーン・フィル側から是非ともうちで初演をという話しになり、この DG の録音が実現しました。決してキャプランがオケを金で買ったわけではありません (^^;。しかし、ウィーン・フィルも新校訂版を使ってブーレーズあたりと録音したって良いわけなのにキャプランを指名するあたり、キャプランの実績を高く評価しているということなのでしょう。

 この新クリティカル・エディションですが、録音を聴いてみる限り、従来版とは耳で聴いて判るほど決定的な違いはありませんでした。ところどころ打楽器が無くなっているように聞こえなくもなかったですが、録音のせいで聞こえなかっただけかもしれません。間違った音が直っているというのもはっきりとは判りませんでした。アクセントやダイナミクス、テンポの間違いは、"解釈" の幅の中に吸収されるものですし、例えば合奏の中でのファゴットにスタッカートが付け足されても、まず判りません。最近 5 番も新校訂版となり、そのスコアを見たとき実感したのですが、僅かにオーケストレーションが変わっていてさえ、スコアで比較しない限りまず気が付きませんでした。演奏者にとっての決定的な差異と、聴衆のそれとは必ずしも一致しないのです。そういう点で興味を持たれている方は、あまり期待しない方がよろしいでしょう。

 肝心の演奏ですが、《復活》に惚れ込み四半世紀もの間《復活》を振り続けてきた男の演奏、さぞかしロマンチックで愛に溢れた熱演なのだろうと想像したのですが、実際は、実に禁欲的といいましょうか、楽譜をそのまま音にすることによってマーラーへの忠誠を示しているような、そんな演奏でした。LSO との CD は持ってないので比較は出来ませんが、ウィーン・フィルということで構えてしまったのでしょうか、それとも元もとこういうブーレーズのような学究肌な演奏をする人なのでしょうか。アマチュア指揮者のマーラーというと独りよがりで破綻しまくりな演奏という印象を持ちそうですが、そういう演奏とは対極的な、流暢で分厚くて安全運転な演奏です。演奏内容的にはプロの指揮者と同列と見なして良いでしょう。曲想が変わる部分で幾分表現が曖昧になることは否めないですが、テンポ・キープとかアインザッツとか、かなり細やかに頭と耳を使って丁寧に行っているという感じです。

 解釈も変に深読みしたりせずに実に保守的・最大公約数的で、特に目新しい芸当はないですが、マーラーが「ここの音形は引き延ばせ」と書いてある部分はちゃんと引き延ばしたり、いかにも "マラ2" 的な王道を行くものを聴かせてくれます。これは裏返せば、予定調和的すぎる訳でして、ウィーン・フィルの音色に酔っていれば良い部分はともかく、曲を動かしたりせねばならない部分ではもっと自己主張を「これがキャプランのマラ2だ」というところを聴かせて欲しかったです。全体的に "ウィーン・フィルのマラ2" になっており、キャプランはどこにいる?という感じです。響きがぶ厚く安定して、聴き応えは良いのですが、説話性というダイナミックな振幅がいまいちで、物足りなさが付きまといます。合唱が入ってからの感動的な部分も、もうちょっとクレシェンドを聴きたいなというところで次に行かれたり、私のツボにはピタリとはまらず、熱演の割にカタストロフを味わえませんでした。細かい部分では、アクセントのあるトレモロの強調の仕方とか、芸の細かい演奏で目を見張る部分はあるのですがね。クリティカルにこだわった演奏な訳ですが、ヴァイオリンの両翼配置は行っていません。オケの配置は、ニューイヤーで見られるようなウィーン・フィル独特の配置のようです。

 CD 2 枚組で、1 楽章で 1 枚、2〜5 楽章で 1 枚という面割になっています。録音もアコースティックな立体感はいまいちですが、音としては綺麗に録れています。値段もレギュラー 1 枚ものの価格で妥当でしょう。ウィーン・フィルのマーラーが好きな方にはお薦めな CD です。《復活》の名演を期待している方は、期待せずに聴くと良いかもしれません (^^;。
 
2003.9.19

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2003年9月19日 11:29

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トラックバック時刻: 2005年10月15日 14:12

コメント(4)

初めまして、キャプラン指揮《復活》のレヴューを拝見しました。とっくにご存知かもしれませんが、ブーレーズは今年の5月にWPhを指揮して《復活》を演奏し、それに前後して録音も完了したとのこと(DGのサイト情報による)です。楽譜の版は(私に知識が無いこともあり)分かりませんが、数年内にはリリースされるのではないでしょうか。ORFでの放送を聴く限りでは、やや枯淡の《大地の歌》からは想像し難い、精緻な力演が聴かれたようです。

投稿者 M. F. : 2005年11月13日 13:47

コメントありがとうございます。ブーレーズがウィーン・フィルで《復活》をやったということは、CD-R 盤が出たことで知りました (きっと DG からも出るだろうと思い、それは買っていませんけど)。DG のサイト見てみましたが、書いてありますね。最近の DG はサイクルが短い感じなので、来年前半には発売されることを期待しましょう。でもシカゴ響とやって欲しかったなぁ (^^;。

投稿者 渡辺純一 : 2005年11月15日 11:16

今見たところDGGのサイトではInternational releaseが「May 2006」となっていました。ブーレーズのリリース待ちの録音は他にもある(バルトークのヴァイオリン協奏曲第1番とヴィオラ協奏曲)のでもう少し先かと思っていましたが、あと半年ほどで聴けるということですね。楽しみです。

投稿者 M. F. : 2005年11月18日 06:49

見つけました。あと半年後ですね。ひょっとするとまた国内先行発売とかで 3 月位にでたりするかも。

投稿者 渡辺純一 : 2005年11月18日 09:45

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