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《コープランドとアメリカン・サウンド》ティルソン・トーマス/SFS(DVD)[AVIE]

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KEEPING SCORE - revolutions in music
《コープランドとアメリカン・サウンド》
メイキング・オブ・ア・パフォーマンス
ライヴ・パフォーマンス:《アパラチアの春》室内楽編成版全曲

マイケル・ティルソン・トーマス指揮
サンフランシスコ交響楽団
AVIE 821936-0014-9 [DVD]

 前回に引き続き、マイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ交響楽団のレクチャーシリーズ『キーピング・スコア』から、《コープランドとアメリカン・サウンド》です。

 前回レビューした《春の祭典》と違い、今回は作品単品ではなく作曲家をクローズアップしております。"アメリカン・サウンドというものを作り出したのはコープランドだ。では一体アメリカン・サウンドというのはどういうものなのか、コープランドはどのようにしてそれを獲得したのか" という問題提起で番組は始まります。ユダヤ系移民の子供としてブルックリンに生まれたため、自然にユダヤ音楽とジャズに親しんだコープランド。MTT/SFS はヨーロッパ・ツアーの最後の目的地プラハで、コープランドの第 3 交響曲をとりあげるという象徴的なコンサート(しかも1947年の同じ日同じ場所でバーンスタインがこの曲のヨーロッパ初演をやったという)を行っており、その模様も映し出されます。

 移民の時代、著名な音楽家が続々とアメリカに渡りました。ティルソン・トーマスは言います。「ドヴォルザークは、アメリカでのクラシック音楽というものは、黒人の精神やネイティブ・アメリカンの音楽を元にするべきと助言したことでしょう。一方 1910 年にアメリカに渡ったマーラーは、ただ一つの種類の民俗音楽で代表させるにはアメリカ人は多様すぎると考えていました。結局は 2 人とも間違っていたのです。なぜならちょうど川を越えたところに、アーロン・コープランドが育っていたからです。コープランドはマーラーの音楽を聴いたり彼の指揮を見たりしなかったし、彼のアドバイスも恐らく知らなかったでしょう。結局マーラーの音楽は伝統音楽への別れの挨拶だったのであり、コープランドの音楽は容赦ない革新への挨拶となったのです。」

 おっとこの調子だと内容を全て書いてしまいそうです (^^;。この後、コープランドは「ストラヴィンスキーがいるから」という理由でパリに留学し、ナディア・ブーランジェに師事した事。帰国後、芸術家が集う大邸宅の "ヤドー" で前衛作品の傑作《ピアノ変奏曲》を作曲し成功するが、世界恐慌のため教職を余儀なくされた事。チャベスに招待されて赴いたメキシコのダンスホール "エル・サロン・メヒコ" で聴いた音楽に衝撃を受け、その後ポピュリストとして作風を確立していったこと等が、コープランド自身のインタビュー映像も交えて紹介されます。

 《ピアノ変奏曲》のくだりでは、ティルソン・トーマスによるピアノ演奏と、同曲を管弦楽編曲した《オーケストラ変奏曲》を対比して聴かせてくれます。さらに《エル・サロン・メヒコ》でも、"《ピアノ変奏曲》のある種ユーザーフレンドリーなバージョン" だという事を、《変奏曲》と《エル・サロン・メヒコ》の対比により示してくれ、これには目から鱗が落ちました。私は《変奏曲》ってそんなに重要な作品とは思ってなかったのですが、認識をあらたにしました。

 生前はコープランドと親交の深かったティルソン・トーマスですので、その思いが解説からも伝わってきます。コープランドの仕事部屋に赴き、思い出話も語ってくれますし、作品の解説はコープランドのピアノを使って行っています。演奏面でも、今はこのコンビしかコープランドの最高の演奏は出来ないだろうと思わせてくれます。コープランドの自演やバーンスタインの演奏よりもクリアでシャープな演奏をするので、わたし的には理想の演奏と思います。番組でも MTT/SFS の演奏がたっぷり聴けますが、途中ダイアログが入ったり、切れたりするので、全然物足りないです。

 後半は《ビリー・ザ・キッド》と《庶民のためのファンファーレ》《アパラチアの春》の話題が中心です。特にマーサ・グラハムのダンス映像も使った《アパラチアの春》の解説が圧倒的で、シェーカー派の音楽から引用された "シンプル・ギフト" と、組曲版ではカットされた "火と硫黄の天罰" のシーンの意味を深く説明しています。ティルソン・トーマスはこの "火と硫黄" のシーンが《アパラチアの春》には欠かせないと考えているようで、オーケストラ版で演奏している CD でも、本来存在しないこのシーンを復活させているほどです (1954 年の管弦楽編曲の際にコープランドの手でカットされましたが(組曲版)、手稿譜にはこの部分も存在しているようです)。この番組でティルソン・トーマスからその意図を説明されて、なるほどと納得できた次第です。番組ではオリジナルの 13 人の室内楽編成版で演奏しております。

 番組はここで "シンプル・ギフト" の感動的な余韻を残し終わりますが、コープランドはこの後再び《コノーテーションズ》などの前衛的な作品を残し、また晩年は寡作になります。この辺のフォローも聞きたかったですね。

 DVD 後半のコンサート編は、室内楽編成版の《アパラチアの春》が全曲演奏されます。《春の祭典》とは違い、観客のいないホールでの収録。番組収録を意識して、服装も黒で統一です。そもそも室内楽編成版が聴ける機会は少ないので、かなり貴重なソースです。大編成のオケ版もスケール感があって良いですが、室内楽編成の濃縮感もストラヴィンスキー的で、個人的にはこちらの方が好きなくらい。演奏もサンフランシスコ響の首席奏者達の妙技が楽しめ、雰囲気も素晴らしいです。余談ですが、Boosey & Hawkes より出版されている《アパラチアの春》の室内楽編成版スコアは、なぜか組曲版であり全曲収録されていません。購入を考えている方はご注意下さい。

 コンサート編の音声は 3 タイプ選べ、1 つは 2 チャンネルステレオですが、5.1 ch サラウンドとして 1 つは普通のミキシング(客席音場)、もう 1 つは指揮者の位置で聴くようなミキシング(ステージ音場)となっています。鑑賞には "客席音場" が一般的かと思いますが、"ステージ音場" で聴くと、オンマイクの各楽器が超ワイドに広がり、1st ヴァイオリンなど真横ぐらいから音が聞こえてきます。指揮者の位置で聴くのより楽器の距離感があるので、本当の指揮者音場では無いのですが、楽器に囲まれている感覚はなかなか面白かったです。小編成だからこそ出来る芸当でしょう。

 出来る事なら、あと《庶民のためのファンファーレ》をコンサート編に収録して欲しかったですね。3 分程度なので可能ではないかと思うのですが。ドキュメンタリー編で一応全曲流していますが、ダイアログが一部かかっています。SFS のパワフルで美しい金管のアンサンブルをしっかりと聴きたかったです。CD でリリースされていない《エル・サロン・メヒコ》もちゃんと聴きたかったし、交響曲第 3 番でも良いですが…。ドキュメンタリー編は実に良くできており、構成が緻密でした。このコラムで内容を要約してご紹介しようと試みましたが、色々と細かく伏線が張られているので、一部を取り上げるだけではすぐ話しの連関が崩れてしまい、上手くすくえませんでした。あそこもここも、盛り込みたくなります。まあ全部書くとまずいでしょうから、DVD で楽しんで下さい。無論日本語字幕はありませんが、英語字幕を表示しておけば大体理解できる内容だと思います。つうか AVIE も日本語オビ付けるくらいなら、対訳も添付すれば良いのに。こんなに良いコンテンツなのに、それで敬遠されれば勿体ないです。

コープランド・ネタはこちらもどうぞ

コープランド:交響曲第 3 番他/大植英次 [RR]

関連記事を検索: コープランド サンフランシスコ響 ティルソン・トーマス

2007年1月11日 17:29

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