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マーラー交響曲第 2 番/ティルソン・トーマス [SFS Media(AVIE)]
マーラー:
交響曲第 2 番
サン・フランシスコ交響楽団・合唱団
イサベル・バイラクダリアン(S)
ロレーン・ハント・リーバーソン(Ms)
SFS Media 821936-0006-2
マイケル・ティルソン・トーマス/サンフランシスコ響のマーラー・チクルスも第 5 弾。そのどれもが素晴らしい録音と磨き抜かれた演奏で、最新のマーラー・チクルスに相応しいクオリティの高いものでした。しかし SACD Hybrid の為か値段が高く、よほどのファンで無いとなかなか手を出しにくく、よほどのファンである私も、少しでも安く早く手に入れるべく色々と苦労しました。そういう顛末は過去の記事に書きましたので割愛しますが、今回は順当に SFS のオンラインショップより直に購入しました。今まで SFS shop は国際宅急便でしか送ってくれなかったのですが、今回からエアメールも利用可能になり、送料が安く済むようになったからです。値段的には Amazon.co.jp が一番安かったのですが、それを知ったのは注文後。やはり一筋縄ではいかないようです。
さて、演奏ですが、前回の 4 番では「女性的なマーラー」と評価しましたが、今回の 2 番はうって変わってパワフルで勇壮なマーラーが展開されております。オケの配置がヴァイオリン対向配置のため、1 楽章冒頭の低弦の "怒声" が明瞭に聴こえます。小音量再生では迫力無いので、ボリュームを上げめで聴いて下さい。相変わらずオケの音は軽めなのですが、舞台左半分を広く使って迫る低弦の浸透力はなかなかのものです。その後も、あらん限りのパワーを込めて音楽を叩き付けてくるシーンが多く、従来のティルソン・トーマスのどことなくお洒落な演奏というイメージからほど遠い演奏が展開されていきます。こうなってくるとサンフランシスコ響の綺麗な音では物足りなくなってくるほど。ベルリン po. などの芯のしっかりした音で聴きたくなります。まだ若いと思っていたティルソン・トーマスももう 60 歳ということですが、彼の音楽観に質的な変化が生じたのでしょうか。
解釈としては、遅めのマーラーで、マーラーらしい気性の激しい演奏ではなく、落ち着いた足取りのなかにもパワーと歯切れの良さを含んだ演奏です。曲の節目でぐっとテンポを落としたり、要所要所で大胆な解釈を聴かせてくれ、全体として突飛な演奏をしている訳ではないのに、常に新鮮味を感じる演奏です。2 楽章も遅めのテンポ設定で、マーラーはあっちこっちに "Nicht eilen" (急ぐべからず) と口を酸っぱくして書き込んでいますが、ティルソン・トーマスはそれを最大限重視し、テンポの変化を最小限にしたなかで音楽的な変化を大きく付けることを徹底して行っています。この曲のこういうスタイルは好みが分かれるところかもしれませんが、ひとつの流れの中で完結することで歌謡曲のような通俗曲風の効果が得られているようにも感じます。独特の雰囲気で悪くありません。3 楽章は早めのテンポで引き締まった演奏。ヴァイオリン対向配置による掛け合いが効果的です。
4 楽章は、幾分肩の力を抜いた神秘的な演奏ですが、5 楽章ではまた 1 楽章の雰囲気が戻ってきます。色彩感を殺して、重くダークな印象です。トロンボーン吹きとしては聴きのがせない練習番号 10 からのコラールですが、トップの音程が微妙に探っている感じでした。クレシェンドする過程でなかなか面白い解釈を見せているのが斬新か。行進曲の部分では、普通聴こえにくい下のトランペットも綺麗に聴こえていて素晴らしいです。しかし、その後の舞台裏のトランペットは最後やはりオーケストラにかき消されてしまう。ミキシングでも拾ってないようですね。続く地獄の釜が開いたような大強奏では、ホールが鳴動する雰囲気が欲しいですが、あまりホールトーンが乗っていなく、思ったほど広がりが無いのが残念。
合唱が現れて以降の音楽は、弦楽器にふくよかさがあまりないので幸福感は少ないですが、澄み切っている感じの音はこれはこれで悪くありません。ティルソン・トーマスも時間をかけて歌わせています。後半部分のマッシブなパワーも凄いですし、ためる部分も思いっ切りためているので、劇的効果もはっきりしています。最後のロングトーンの部分の、ポリリズム的なグロッケンとゴングもガッチリ聴こえ、なかなかカッコ良い。満足度の高い演奏でした。
2004 年 6 月 23-26 日、サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホールでのライヴ録音。録音は今までのものと同様、透き通るような見通しの良い音で、高解像度。濁りも少なく優秀です。使用している版は、5 楽章の 487 小節目からの Fl. Ob. が聴こえないので、キャプラン校訂版を使っているのだろうと考えていますが、まだ出版されてないので断言できません。
この曲に対して思い入れの強い人は自分なりのベストがあるだろうし、それだけにこの演奏への感想も人それぞれだと思います。私も基本的には《復活》はシノーポリ盤が好きでして、舞台作品のようなドラマ性や充実感はシノーポリを越えるものはなかなか無いだろうと思っています。それでもこのティルソン・トーマス盤はまた違った凄さを伝えてくれます。巷には数多くの《復活》がありますが、その中で "ティルソン・トーマスの復活" として個性を十分に備えた演奏だと思います。
チクルスはあと 5, 7, 8, 9 番と難曲・大曲が残っていますが、チクルスを通して見ても音楽性が深まっていくのが判るだけに、続くリリースが非常に楽しみです。
2004年11月12日 09:38
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コメント(2)
投稿者 伊藤一誠 : 2004年11月26日 06:34
9 番聴いてこられましたか。羨ましい限りです。
もう十数年前になると思いますが、サントリー・ホールで MTT/ロンドン響のマーラー 9 番を聴きまして、凄まじい集中力の圧倒的な名演で、今もその感動が忘れられません。SFS との 9 番も良かったとのことで、次のリリースが待ち遠しくなりました。貴重な情報ありがとうございました。
投稿者 渡辺純一 : 2004年11月26日 18:02
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Berkeley在住の伊藤と申します。
復活、第九ともにデービスまで聞きに行きましたが、来春あたりに多分リリースされる第九は大変な名演だったと思います。バーンスタインの影響を受けているものの、独自のスタイルを確立してきた集大成的な演奏と感じました。もちろん、このチクルスの集大成は来シーズン(再来年春だと思います)の千人の交響曲になるわけですが。
他の演目も含めて、MTTからは目が離せません。