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マーラー:交響曲第 6 番/ティルソン・トーマス [AVANTE]

MTT-Mahler6.jpg

マーラー:
交響曲第 6 番

マイケル・ティルソン・トーマス指揮
サン・フランシスコ交響楽団
AVANTE 821936-0001-2

 サン・フランシスコ交響楽団 (SFS) の自主レーヴェル《SFS Media》の第 1 弾。マイケル・ティルソン・トーマス (MTT)/SFS は今後 5 シーズンのライヴセッションでマーラー全集を完成させ、SFS Media より発売する予定です。最初は SFS 直販オンリーでしか手に入らなかったのですが (私はそのころ買いました)、最近 AVANTE という新興レーヴェルがディストリビュートを引き受け、近いうちに国内に入ってきます。AVANTE は一昨年まで BMG Classics のプロデューサであったサイモン・フォスターとメランヌ・ミュラーが興したレーヴェル。フォスターとミュラーは MTT を BMG に呼んだ人物で、MTT のビッグ・プロジェクトが AVANTE から発売されるのは自然な流れと言えるでしょう。

 MTT のマーラーはライヴで 9 番を聴いたことがありますが、引き締まった表現のなかにグッと惹きつける部分が多く、さらに、指揮者とオーケストラと聴衆がその波長を共有する "マーラーが降りてきた" 瞬間を幾度となく味わうことが出来た希有なコンサートと、私の記憶に深く刻まれています。BMG よりリリースされている 7 番も素晴らしい演奏で、それは《クラシックの嗜好》ページで大絶賛させていただきました。SONY より出ている 3 番も彫りの深い良い演奏です。

 この 6 番も切れとスピード感のある演奏です。1 楽章冒頭の低弦によるリズムがスピーディーで軽め、その後の第一主題もアゴーギクをかなり恣意的に効かせており、まあこういう演奏が嫌いという人もいるだろうなと思わなくもないですが、私は MTT のこういうあざとさはスタイリッシュと思えるので、特に抵抗無く聴けます。第 2 主題「アルマの主題」のパウゼも実に生き生きと描いており、緩急の付け方が実に見事です。オーケストラの配置もマーラーでは一般的になったトラディショナル配置で、第 1 ・第 2 ヴァイオリンが左右から掛け合う部分などかなり効果的に演出しています。リズム主題にもうちょっと重みと圧迫感があれば素晴らしいのですが、これはめちゃくちゃ抜けの良い高気圧的な録音のせいかもしれません。まあそういう "6 番の狂気" を聴きたいときは、シノーポリの演奏を聴けばいいわけですし、ひとつの演奏にそう全てを求められるものでもないでしょう。

 3 楽章では弦楽器にもうちょっとふくよかさが欲しいと思いますが、MTT の解釈としては物語的で聴き心地のよいものです。4 楽章もシャープで切れのある演奏で、特に Allegro energico からの推進力・ヒロイックな雰囲気は、第 1, 2 交響曲の主人公の再来と思えるほどです。この 4 楽章で問題となる 3 発目のハンマーですが、楽譜通りで、叩いていません。また 1 発目のハンマーの後の "バトル・シーン" における弦楽器で、マーラーがオクターブ上げるよう指示した部分も楽譜通りに上げて演奏しています。あまりにも効果的過ぎてマーラーが取り下げてしまったこれらの部分を復活した演奏に、ショルティ/シカゴ響のものがありますが、オクターブ低い弦楽器に鳥肌が立ち、3 発目のハンマーには完全に打ちのめされてしまいます。興味のある方は聴いてみて下さい。MTT の演奏にはそこまでの剛直さはありませんが、疾風怒濤のごとき勢いで燃え上がる演奏です。

 細部が実に良く磨き込まれている演奏ですので --好き嫌いはともかく-- 聞き飽きしませんし、完璧になるまで何度もリハーサルをしそして本番でさらにインスピレーションを加味するという、チャップリン的芸術性と完成度の高さを感じてしまいます。今演奏を聴きながらこの原稿を書いているのですが、つい書く手を止めて聞き入ってしまうほどです。シノーポリのような哲学的深遠さは感じませんが、こういう若々しいマーラーも新鮮で、何度となく聴きたくなります。これからのシリーズが実に楽しみに思える 1 枚でした。

2002.4.12

関連記事を検索: AVIE サンフランシスコ響 ティルソン・トーマス マーラー 交響曲

2005年6月17日 11:29

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コメント(2)

はじめまして。
実はこのCD、アマゾン・カナダのミスで配送されてきたのです。同曲をツェンダーが振ったものを注文していたので、文句を言ったところ、タダで差し上げますと言ってきました。ラッキー!

マラ6はいろいろと異演盤を聴いてきましたが、MTTは初めてです。仰る様に少々恣意的なモーションが感じられる演奏ですが、面白く聴けました。

今のところ、マラ6ではボンガルツの演奏が大のお気に入りです。
http://blogs.yahoo.co.jp/william_kapell/4968171.html

投稿者 Kapell : 2008年9月14日 14:09

Kapell さん、はじめまして。
サイトをお見受けしたところかなりマラ6を聴き込まれているようですが、そんななかまだ聴いていない CD が配送ミスで手に入ったとは、偶然を通り越しているように思えますね。ハインツ・ボンガルツという指揮者は名前すら聞いたことありませんでした。探して聴いてみたいと思います。

投稿者 渡辺(管理人) : 2008年9月16日 15:27

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