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ブルックナー:交響曲第 6 番/ナガノ [HM]
ブルックナー:
交響曲第 6 番 イ長調
ベルリン・ドイツ交響楽団
harmonia mundi HMC 901901
個人的に今最も外れの少ないコンビ、ケント・ナガノとベルリン・ドイツ響によるブルックナーです。同コンビでは以前にブルックナーの第 3 番 (第1稿) をリリースしており、そちらも素晴らしい演奏でした。今回もなかなか単品で取り上げられることの少ない 6 番ということで、従来のニッチ路線(?)を貫いています。
私はブルックナーは全集で買うことが無いので (全集はティントナー盤しかもっていません)、6 番はかなり縁遠い作品。ティントナーの他にはショルティ盤とバーンスタイン盤 (これも珍しいが ^^;) しか持っていません。全集でもなければ 6 番を取り上げる指揮者が少ないのは何故なのか、ブルックナー色が濃い割には特徴が無いからなのか。これは逆に指揮者の力量なりブルックナーへの理解度なりが試される曲ということになるでしょう。
確かに難しい曲なのです。さて旋律はここで終わるのか、それともまだ続くのか。ここにいきなり挟まるコラールは何の為なのか。その後に続く旋律は、前の主題と続いているのかそれとも別に扱うべきなのか。ここで一旦曲を納めるべきか、それとも開いておくべきか。つまり分岐路が多い曲で、ちょっとしたニュアンスの付け方ひとつで展開がまるで変わってしまうのです。しかもどういう経路を辿っても良いようには出来ていません。ブルックナーの思い描いた正解はおそらく 1 本道なのです。それを上手く辿らないと、まったく説得力のない演奏になってしまいます。特に 4 楽章が複雑で、こういうことには鼻の良いバーンスタインでも、沼にはまったり断崖に飛び出したりしていました。反対に言うと、理想的な演奏を追い求めたくなる曲なのです。もちろん、ブルックナーの音楽にドラマ的な説得力なんて必要あるかい?というのであれば、こんな悩みは無縁です。
ナガノの演奏は、やはり巧いです。期待を裏切りません。まずベルリン・ドイツ響の硬質でエッヂの効いた音が良いです。重量級で輝かしく鳴り、しかもうるさくならない。弦楽器に厚みとふくよかさがあれば尚良いのですが、これでも十分です。第 1 楽章はメリハリの利いた切れのある演奏。ブルックナー・リズムといわれる 2 拍子と 3 拍子の同時並行が永遠と続く曲で、最も単純な素数をいかに混ぜ合わせ交換するかといった数学的美しさが表れています。雰囲気的には 9 番に通ずる輝かしさと厳粛さをもっており、6 番ってこんなに綺麗な曲だったのかと驚かされます。特にコーダ (恐らく) W からの雰囲気が清々しくて気持ちいい。楽譜通りに演奏していない部分がいくつかあります。指示の無い sub.p cresc. を入れている箇所がありますが、これは違和感ありません。再現部の T の前にフェルマータによるパウゼの指示があるのですが、それは無視されます。最後 3 小節にある molto ritard. の指示も無いも同然です。まるっきり無視するのもどうかとは思いますが、こちらの方が自然な印象であることは否めません。
ブルックナー入魂の Adagio ですが、割と単純な 2 部構成ですし、カタストロフを感じさせる部分が少ない曲です。 6 番は全体的に見ても "肥大化" してない作品で、その辺が愛聴家の少ない所以かもしれません。ナガノの演奏はティントナーと比べると 1 分半ほど早く、さらにさっぱりしていると思えますが、メリハリがあるのでドラマの密度が濃く聴き応えは十分あります。個人的には、弦楽器がスラーをレガートのように 1 音ずつはっきり発音するのが、気になる部分もありました。
スケルツォも、ブルックナーのスケルツォとして実に模範的な出来で、テンプレートのごとき作品。演奏も、言葉が悪いかもしれませんがノリの良い演奏で、申し分ないでしょう。
さて問題の第 4 楽章ですが、開始からテンポを煽って焦燥感を強く描出し、それを Tutti で力強く解決して見せ、大伽藍へと持ち込むなどと、ストーリーが逐一説明できるほどドラマの展開がしっかりしています。テンポの変化やダイナミクスの変化も大きく、適切で、あざとさはあまり感じさせません。それでも人によっては芝居かがっていると思えるかもしれませんが。私はこの楽章、溢れる曲想を思いのまま詰め込みすぎて収拾がつかなくなっている感を抱いていましたが、ナガノの演奏を通じて、巨匠の至芸を見せつけられた思いです。またストーリーだけを追った演奏ではなく、タラッタ・ターラという素朴で愛らしい動機もチャーミングに聴かせていますし、Low Brass によるコラールも神聖な面持ちで、豊かな曲の雰囲気も楽しめます。
録音は 2005 年 6 月、ベルリンのフィルハーモニーにて。ヴァイオリンの両翼配置にしています。会場が同じせいか、ベルリン・フィルを聴いているみたい。mundi らしい肌理の細かい艶やかな音で、広がり感や奥行き感も十分。中高域が若干濁るのでうるさく聞こえる部分もありますが、装置によってバランスが変わるかもしれません。十分優秀録音です。おそらく SACD も出ると思われますが、今回は CD しか見かけませんでした。
枯れた味わいの風格のあるブルックナーを好む方には合わないディスクかもしれませんが、私みたいな非ブルックネリアンには実に面白い演奏でした。スコアの指示を無視している部分もあるので、そういう意味でも本当のブルックネリアンなら拒否すべき演奏だろうと思います。しかしこの曲に感じていた物足りなさをドラマの密度で補ったケント・ナガノの手腕は確かなもので、後期の名曲群の息吹を十分に湛えている作品だということが納得できます。6 番っていまいちと思っている方は、お試しあれ。
Artistic direction: Martin Sauer
Sound recording, assembly: Mathias Ramson, Christian Rudat
2005年12月 9日 10:55
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