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マーラー:交響曲第 1 番/ロジャー・ノリントン [haenssler]
マーラー:
交響曲第 1 番 (『花の章』付き)
SWR シュトゥットゥガルト放送交響楽団
hänssler CD 93.137
ノリントン/シュトゥットゥガルト響によるピリオド・アプローチのマーラーです。ピリオドというとノン・ヴィブラートの透明な響きということで、ノリントン本人も、またこの演奏を紹介する人も、ノン・ヴィブラート奏法であることを強調して語りますが、管楽器などでは控えめながら普通にヴィブラートを掛けて演奏しています。ソロまでノン・ヴィブラートだと、現代人の耳にはやはり味気なく聴こえてしまうからでしょうか。どちらにせよ "ヴィブラートを排したオケ" というキャッチは正確ではありません。この言い回しは弦楽器のみに当てはまるもので、まったくヴィブラートを掛けてないような言い方はまやかしに思えます。正直に、「肝心な部分に控えめにヴィブラートを掛けるのは現代の演奏では必要なんだ」とでも言ってくれれば良いのに。
しかしそれでも響きの透明感は、モダン演奏のオケより遙かに高いです。マーラーは第 3 交響曲の頃まで、べったりと和声を鳴らす部分が多々あり、そういう部分のよどみの無さは言うに及ばず、動きの激しい部分でも弦楽器の音が良く立って聴こえ、鳥のササミに胡椒をかけたような(?)、すっきりとピリリとした演奏になっています。また中間部に現れる弦楽アンサンブルの部分でも独特の美しさを出し個性的。演奏もオケの音色に合わせたように快速なものになっています。音色と解釈が分かちがたく影響しあっていることで、なかなかユニークな演奏に仕上がっています。
第 1 楽章はかなり早い演奏です。主部は歌曲《さすらう若人の歌》から取られており、歌えるようなアプローチの演奏もありますが、ノリントンの演奏では早くてとても歌えません。しかし単に突っ走るだけの演奏でもなく、超自然的な雰囲気は無いものの、この曲らしい若々しく覇気のある演奏になっています。
第 2 楽章は『花の章』。この曲がここに挟まると、第 7 交響曲のようなアーチ状の楽章構成になりますが、ノリントンはこの曲の「愛」という主題に注目し、交響曲全体の要になる曲として重視しているとのことです。ノリントンの演奏が決して悪いわけではないと思いますが、曲想の割に密度の薄さを感じてしまいます。第 10 交響曲の未完の部分を聴いているみたい。この曲は、スコアを見ても、第 1 交響曲の文脈と齟齬を来さないようには出来ているものの、他の楽章と比べ密度が低く、"小品" の域を出ていないように思えます。
第 3 楽章は、ノリは良いのですが、低域が軽いため舞曲の底力が足りない感じがします。弦楽器も八分音符の走句で音を完全に切らないので、躍動感もいまいち。しかし踊りではなく、マーラーの構想通りの揚々とした航海というイメージにはピッタリ来るようです。切れのあるホルンが良い雰囲気にしています。
第 4 楽章もまた早めの演奏。フレール・ジャックを深刻そうに扱わず、子供が何の気なしに歌っている感じにしているあたりが、痛々しくて良い。冒頭のコントラバス・ソロは、従来通りソロでの演奏。《さすらう若人の歌》からの引用部分では、弦楽器のノン・ヴィブラート奏法がバレル・オルガン調で効果的。ゾクゾクッとくる。この第 4 楽章は全体的にも語り口が秀逸で、ノリントンにはこういう《角笛》調の曲はかなり期待できるとみた。
第 5 楽章は、満身の力を込めた力演。ようやくライヴらしい、ある程度のリスクはいとわないといった気合いの入った演奏が展開されます。若干のキズはありますが、意外と合わない金管のファンファーレなども無事にこなし、レベルの高い集中したアンサンブルを聴かせてくれます。解釈としてはオーソドックスではないかと思いますが、変にこねくった解釈を見せてくれるよりストレートに表現してくれた方がこの曲には良い。早めの展開で疾風怒濤といった爽快感があります。最後のホルンの主題は、聴いた感じトランペットとトロンボーンが追加されています。
録音は 2004 年 9 月 30 日、10 月 1 日、シュトゥットゥガルト、リーダーハレでのライヴ収録。ノイズリダクションをかましたような小綺麗さがあって不自然とも思えますが、フォーカスの合った音で量感があり、綺麗で聴きやすいです。
マーラー好きの私としては、ノリントン・サウンドは正直言って気持ちの悪いマーラーなのですが、それでも実験的な試みとしてはかなり興味深い結果が聴けますし、実験の枠を超えた普遍性を兼ね備えた演奏であることは確かです。マーラーの 1 番は、いわゆるマーラーらしさを強調しすぎて失敗してしまうという例が多いですが、ノリントンはとにかく 1 番のみに注力することでそのリスクを回避できたのではないかと思えます (もちろん徹底したリサーチを 1 番だけでなく広範囲に行っているのでしょうけど)。全曲録音に発展するそうで、またまた新たな楽しみが出来ました。
2005年9月22日 18:36
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