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バーンスタイン:管弦楽曲集/大植英次 [RR]

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バーンスタイン:
キャンディード序曲 (4'30")
キャンディード組曲 (18'08")
ミサより 3 つの瞑想曲 (17'56")
5 つの歌 (9'12")
オーケストラのためのディヴェルティメント (15'08")

大植英次指揮
ミネソタ・オーケストラ
Anthony Ross (cello), Beth Clayton (mezzo-soprano)
REFERNCE RECORDINGS RR-87CD

1999 年 2 月 17-18 日、ミネアポリスのオーケストラ・ホールにて録音。REFERNCE RECORDINGS の大植の CD は録音が良いので、これとあと 2 枚 (《春の祭典》《英雄の生涯》) 持っているが、どれも演奏の水準は高い。海外で活躍しているコバケンや佐渡裕などの日本人指揮者は、どうも恥しくて聴く気がしないのだが (題名のない音楽会でコバケンの「ギョエ〜ッ、ナイス!!」という指揮を見てしまったからかもしれない)、大植は西洋音楽に対するセンスの良さを感じる。師匠の小沢征爾に次ぐ逸材と思える。彼は一時期バーンスタインのアシスタントも務めていたが、その彼がバーンスタインの作品を録音したので聴いてみた (ちなみに彼には、バーンスタインが最後の演奏会で使っていた指揮棒と燕尾服を遺族より送られている)。

 まず選曲が大植らしい。有名どころばかりでなく、さりげなくマイナーな曲も選ぶ。《英雄の生涯》には《影のない女組曲》という気の利いた一曲が入っていたし(R.シュトラウスの《影のない女》はワーグナー・マーラー的なオペラで、私的にシュトラウスの最高傑作と思っているのだが、さらにその中からおいしいところを抜粋して組曲にしている)、このバーンスタインの CD でも《キャンディード組曲》《5 つの歌》という珍しいのが入っている。商業的に考えれば普通は《シンフォニック・ダンス》あたりを入れそうなものだが、そうしないのは独自のサービス精神なのか自信のあらわれか。

 まずその珍しい曲の紹介から。

 ライナーノートによると、《キャンディード組曲》は、バーンスタインのパーソナル・アシスタントでありアーカイビスト、音楽編集者、クリティカル・エディションの出版と歴任したチャーリー・ハーモン(Charlie Harmon) の編曲。1989 年のロンドン交響楽団との『キャンディード』演奏会形式上演のアシスタントを務めた彼は、1990 年のバーンスタイン死去以来、バーンスタインの音楽がもっと手軽に演奏されるようにしたいと考えた。曲はシーン毎に並んでおらず、調性とテンポが上手く繋がるように配置された。たとえオーケストラだけのナンバーであってもカットがあったり、オーケストレーションに手を入れたりしてあるが、違和感を感じないように上手くやっている。それぞれの曲は切れ目無く繋がっていく。

 一曲目は "You Were Dead, You Know"。ソミソレソドシというインターバル音型がくどく、個人的にあまり好きになれない曲。オリジナルでは一部分 "Paris Waltz" の主題が入るのだが、組曲ではそれをそのまま "Paris Waltz" に繋げている。この辺は上手くできている。非常にダイナミックなワルツでショスタコーヴィッチ的。長調と短調が細かく入れ替わるのだが、うまく演奏していてその不安定な感じを出している。短い繋ぎのあと "Bon Voyage"。これは弦楽器+木管、あるいは弦楽器+トランペットでメロディーを演奏するアンダーソン的な編曲だ。続きざまに "Drowning Music" という場面転換の短い曲が入る。バーンスタインの演奏会形式上演では演奏されなかった曲。そしてそのまま "Ballad of Eldorado" に入る。ソロ・チェロがキャンディードの歌を受け持つ。この曲の中に "The King's Barcarolle" のさわりが聞こえる。次にスペイン風ナンバー "I Am Easily Assimilated"。ここでもショスタコーヴィチ的非和声音があるが、自演のものより強調された編曲で効果的である(打楽器を加えるなどの変更も行われている)。もともとスパニッシュ・レディ+コーラスの曲だが、オーケストラだけでも迫力がある。次に "The Best of All Possible Worlds"。クインテットの曲たが、メロディーをことさら強調することなく器楽的にまとめた演奏である。短い繋ぎの後、"Make Our Garden Grow"。これは名編曲と思う。最初のホルン・アンサンブルに始まり、弦楽合奏の「歌」。繰り返し部分は大胆にカットしてあるが妥当な判断。頂点の合唱のアカペラは金管合奏へと移植されているが、トランペットが華々しくメロディーを奏でるなんて臭いことはせず、動機を細かく各楽器に割り振っている(もともとの合唱がそうなっているが)。金管合奏としても違和感のない音域で無理がない。演奏としてもバランスがいい。最後のパングロスの "Any Question?" のセリフは当然ないが(余談だがバーンスタインはぎりぎりまでこのセリフを作品に入れようかどうか迷ったそうだ)、この感動的な "Make Our Garden Grow" が聴けただけでも価値があった。《キャンディード》にはもっと他に良いナンバーがあるので、第二組曲なんて可能性も無くはないだろうが、"Make Our Garden Grow" がもう使えないのでまとまりが付かないか。

 次に、珍しい《5 つの歌》。これはこういう曲集があるわけでなく、バーンスタインの 30 以上あるピアノ伴奏付き歌曲の中から 5 曲を、《ウエスト・サイド・ストーリー》のオーケストレーションを手がけたシッド・ラミン (Sid Ramin) がオーケストレーションしたものらしい。その中の一曲 "Piccola Serenata" は作曲家や指揮者が練習などでメロディーを口ずさむときのシラブルを模倣したバラード。器楽的なメロディーの上に "Da-ga-da-ga-dum-da-lai-la-lo" というシラブルが続く。この曲はカール・ベームの誕生プレゼントで、クリスタ・ルードヴィヒの歌、ジェームズ・レヴァインのピアノで演奏されたとのこと。他の曲もブロードウェイ的というよりマーラー・R.シュトラウス的だ。曲については詳しくないので割愛。

 さて、曲が多いだけに長文になってきた。後は演奏についてちょっと書こう。

 《キャンディード序曲》は、バーンスタイン版《ルスランとリュドミラ》という感じで、早いパッセージをどれだけ早く弾けるかが勝負という演奏が多い中、大植は必要以上に早くせずアーティキュレーションを際だたせるよう配慮している。その控えめなテンポのおかげで、この後のドラマを期待させるための序曲という性格を強くすると共に、祝祭的な雰囲気をもたらしている。それだけに、このあと続く『組曲』が、全曲版のようにウェストフェリアの合唱で始まってないのが残念にも思えてしまうほど。この序曲はテンポが速いとせこい印象になるが、この演奏は録音と相まってスケールが大きい。

 《ミサより 3 つの瞑想曲》はソロ・チェロをアンソニー・ロス (Anthony Ross) というミネソタ・オーケストラの主席チェロ奏者が担当している。バーンスタイン&ロストロポーヴィチの演奏のようなアクの強さはなく、抑制の利いたなかなかの名演。録音が良いので弦楽合奏+パーカッション+ソロの音響が効果的で、特に「第二の瞑想」や「第三の瞑想」の冒頭などにある、スネアのロールやバスドラやゴングのロール、ティンパニの 9 拍子ベースの交差リズムなど、音場感が良く効果的。

 《オーケストラのためのディヴェルティメント》は真摯な演奏。それが仇になってか、ユーモラスな要素は少ない。しかしこのことで善し悪しは判断できないだろう。この曲のユーモアの部分は幾分犠牲になっているが、そのユーモアを真面目に捉えることによって別の魅力を引き出している。これはマーラーのアイロニーを真面目に捉えても名演になりうるのと同じこと。大植は各曲の違いを明確に表現する。特にテンポの設定とアーティキレーションの付け方が的確だと思う。"sennets and tuckets" の漲る緊張感。"waltz" の 7 拍子の弾みつつも漂うテンポ感 "mazurka" の長調と短調を織り交ぜたメストの雰囲気の描出。"samba" のじわじわとアッチェレランドしてくる突進感(最後のトランペットのフラッタがこけても気にしない ^^;)。"turkey trot" はアゴーギグが巧み。"sphinxes" は料理しにくい曲だが、案外サラリとかわしてまとめている。"blues" はバーンスタイン盤ほど派手にやってないが、管楽器の掛け合いの妙はこちらの方が楽しめる。"march" は伴奏部のさり気ない遊びをきちっと表現し、最後の Tutti のマーチもアイヴス風の混乱へと持っていく。グラモフォンのバーンスタイン盤は第 2 トリオの as-durの繰り返しを省略しているが、大植は楽譜通り 2 回演奏している。

 録音は、再三書いているように優秀なものだ。HDCD のフォーマットで収録されているようなので、HDCD 対応のプレーヤーで聴いてみたい気もするが、普通のプレーヤーでも十分だ。同じ大植の CD でも、今までは音像に若干のにじみを感じたが、今回のはクリアで定位も良い。ステージの見通しも良く奥行きも感じる。情報量、密度も十分だ。音量を上げても荒れたりしないので、ついつい音量を上げたくなるが、近所迷惑になると悪いので程々にしましょう。

演奏 : ★★★★☆
録音 : ★★★★★

関連作品 :
キャンディード  バーンスタイン/ロンドン SO.他 [DG]

ストラヴィンスキー:春の祭典・火の鳥組曲・うぐいすの歌
R. シュトラウス:英雄の生涯・影のない女組曲
マーラー:大地の歌
  以上 大植英次/ミネソタ・オーケストラ [RR]

1999年9月16日 16:54

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