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コープランド:交響曲第 3 番他/大植英次 [RR]

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コープランド:
庶民のためのファンファーレ
《アパラチアの春》組曲
交響曲第 3 番

大植英次指揮
ミネソタ管弦楽団
REFERENCE RECORDINGS RR-93 CD

 先週の classicalmidi.net マガジン(3/10 vol.52) の作曲家辞典でコープランドが紹介されていたので、私も便乗してコープランドの 3 番でいきます。お薦めの演奏としてはマガジンで紹介されているバーンスタイン/ニューヨーク・フィルの DG 盤で問題無いんですが、同じ物を取り上げてもなんですので、ここでは晩年のバーンスタインのアシスタントを務めていた大植英次の演奏を取り上げます。ちなみに彼には、バーンスタインが最後の演奏会で使っていた指揮棒と燕尾服をバーンスタインの家族より送られたということです。バーンスタインの弟子と言えども大植の演奏は、師匠のド派手でノリが良く厚ぼったい演奏と対極で、肌理が細かく洗練された演奏を聴かせてくれます。

 大植の CD の選曲は、メジャーな曲とマイナーな曲を組み合わせるというのが常でしたが、このコープランド集ではメジャー 3 連発となっております。といっても "一般的" には《ファンファーレ》以外はマイナーな存在なのかもしれないので、コープランド紹介としてはちょうど良いバランスと言えるでしょう。

 まず《庶民のためのファンファーレ》ですが、シンシナティ交響楽団の指揮者であったユージン・グーセンスが、1942-43 年のシーズンに、戦意高揚のための 18 のファンファーレを委嘱したもののなかの 1 つです。ミリタリー色の強いファンファーレが集まった中で、このコープランドの作品は、音楽的にもタイトルとしても異色だったようです。なぜ "庶民のため" なのかというと、戦争や軍のためにダーティー・ワークを強いられている庶民こそ、ファンファーレでたたえられるに相応しいから。ハイトーンのスラーの連続で、後半に向けてどんどんとヴォリュームを増していかないとならない、金管にとってヘビーな曲ですが、ミネソタ管の金管は、滑らかで艶やかな音色を最後まで保ち、難易度を感じさせない演奏です。

 《アパラチアの春》は振付師マーサ・グラハムより委嘱されたバレエ音楽がベースになっています。グラハムのアメリカを感じさせる特徴的な振付を知っていたコープランドは、グラハムのシノプシスに沿いつつ、そのスタイルに見合うよう作曲。それを聴いたグラハムはハート・クレインの詩より《アパラチアの春》と命名しました。もともとコープランドが付けていた《マーサのバレエ》というタイトルはサブタイトルとして残っています。オリジナルは室内管弦楽 (弦楽四重奏×2+CB+Fl+Cl+Fg+Pf) の編成でしたが、後半の荒々しいシーン約 10 分ぶんをカットし大編成に編曲し直した《組曲版》と、カット無し全曲を大編成に編曲した版の 3 種類があります。一般的なのは組曲版で、大植の演奏もそれです。オリジナル編成はコープランドの自演盤(SONY)で聴けます。大編成のコンプリート・バレエはティルソン・トーマスの演奏(BMG)が良いです。余談ですが、《組曲版》でカットされた部分は幾分描写的なスコアで、曲の調和を乱していると思えなくもない部分ですが、作品に奥行きを与える要素でもありなかなか捨てがたい魅力があります。大植の演奏はここでも見事に決まっており、軽薄にならずにバレエの躍動感や叙情性を見事に引き出しています。

 交響曲第 3 番は、4 楽章冒頭に《庶民のためのファンファーレ》が出てくることで有名な作品ですが、作曲が開始された 1944 年段階では《ファンファーレ》自体そんなに有名だった訳でなく、決して《ファンファーレ》人気にあやかって書かれた訳ではないようです。《ファンファーレ》は 4 楽章冒頭にそっくりそのまま出現するわけですが、それだけに留まらず、全楽章の主題の源として作品の統一性を強固にしておりますし、《ファンファーレ》の演説調で仰々しく鷹揚で力強い性格もさらに発展させています。バーンスタインの目鼻立ちのくっきりした厚化粧な演奏と比べると、大植の演奏は淡白に思えるかも知れませんが、繊細で丁寧な演奏はコープランドに深みを与えています。賑やかさの点ではバーンスタインの演奏にかないませんが、作為的でない自然に湧き出る躍動感としては十分で、わざとらしいオーバーな仕草が苦手な人にはかえって聴き応えのある演奏でしょう。《ファンファーレ》の出現する部分は、やはり感動的です。頂点に到達したという達成感がひしひしと沸き上がってきます。ブラス・セクションのアンサンブルも見事で、オルガンのように聞こえます。その後も金管にとってヘビーな楽句が続くのですが、さすがアメリカの金管、さらにエッジの効いたパワフルな演奏を展開しており素晴らしいです。N 響では《ファンファーレ》を見事に演奏した後はへろへろになってましたからね。まあ CD だと編集がききますので、比較しちゃ可哀想ですが。ともかく最後まで充実した演奏で、聴き終わった後の満足度は高いです。録音も優秀です。

 大植の CD はほとんど持っていますが、日本人指揮者を聴くときに感じる気恥ずかしさというものをまったく感じません。それどころか他のメジャーな指揮者達と十分比較になる、クオリティの高い演奏をしています。師匠小沢征爾を越える逸材ではないかと思えます。今後の彼の活躍に期待しています。

2002.3.15


2002年3月15日 11:29

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