« ピアソラ:タンゴ・センセイションズ/AA 印の悲しみ、他/アルバン・ベルク四重奏団 [EMI] | カバーページ | 芥川也寸志:《エローラ交響曲》他 (Naxos) »

ピアソラ:ライヴ・イン・トーキョー 1982 [P.J.L]

ピアソラ
ライヴ・イン・トーキョー 1982

アストル・ピアソラ五重奏団/藤原嵐子 (Vo)

 凄いライヴ盤が出ました。1982 年 11 月 21 日に渋谷公会堂で行われた、ピアソラ初来日時のライヴです。

 NHK はこの時の模様を当時まだ珍しかった PCM で収録しており、NHK-FM でオンエアーもされました。しかし、この当時はまだ現在ほどピアソラの知名度は高くなく、また NHK 側もこの公演の価値を充分に認識していなかったためか、オリジナルのマスターテープは破棄されてしまいました。この日本公演は伝説の名演とされており、当然ながら私はライヴにも行ってないしオンエアーも聴いてないので (ピアソラ自体知りませんでしたので)、書物からの情報のみでほぞをかむような状態でした。

 そのような幻のライヴが、ピアソラ解説の第一人者齋藤充正氏の尽力によって CD 化されたのです。齋藤氏の解説によると「当時の関係者と密接な繋がりのあった、ある熱心なマニアの方が、コンサートの全貌を収めた未編集のカセット・コピーを秘蔵」していたということです。しかしそのテープは「ダビングを繰り返したものらしく、残念ながらワウ・フラッターやヒスノイズが少々目立っていた」とのこと。もうひとつ「別の関係者が所有されていた番組のカセット・コピー (音質良好だが、これも残念ながらカセット 3 巻中 1 巻を紛失) とを併用して、音質を補正しながらデジタル・マスタリングを行った」のがこの CD のマスターとなっています。

 実際に音を聴いてみますと確かにヒスノイズが目立ちます。しかし音質自体は充分良好で、とてもカセットがマスターとは思えません。それどころか、音質的に満足できるものが少ないピアソラのレコーディングの中では非常に良質な部類に入ります。それにヒスノイズがあるといってもアンプやスピーカーの S/N に隠される程度のレベルなので、ほとんど問題にならないでしょう。またエアチェック音源でもありませんので、空電ノイズなどもなく、十分聴きやすいです。細かく聴くと、ちょっと高域が尖っているし左右の繋がりも悪い感じもします。滑らかさや瑞々しさがない乾いた音のこともあります。曲によって状態が結構違います。またこれはオリジナルの録音の問題でしょうが、ピアノの粒立ちが悪いのと、ベースがかなり聞こえない (低域感はあるのだが) のが残念です。

 演奏は、伝説のライヴという言葉が決して眉唾ではなかったということを実感できました。細かいことは書きませんが、最初の《ビジューシャ》こそまだ様子見的な感じですが、徐々にそのボルテージは上がっていき、前半の最後《AA 印の悲しみ》など、これまで最良と言われていたウィーン・コンツェルト・ハウスでのライヴに匹敵する、いやまた違う部分で凌駕している凄い演奏になっています。またあまりレコーディングのない《チン・チン》でのピアノのパワフルな即興演奏など他にも聴き所満載。全体的に派手さは少ない演奏ですが、"タンゴの第二の祖国" などと言われていた日本で演奏することの良い意味での緊張感が、集中度の高い張りのある名演を生みだしたように聴こえます。

 有名曲は《リベルタンゴ》以外ほとんど網羅されていますし、『ライヴ・イン・ウィーン』や『AA 印の悲しみ』などの名盤が廃盤となっている現在、さらに貴重度の高いアルバムとなっているのではないでしょうか。また齋藤氏の解説による 32 ページのブックレットも読み応え十分で、音盤を聴きながら何度も読み返したくなる逸品です。P.J.L. では 1984 年の来日公演の CD 化も計画しているとのことで、こちらも良質の音源が見つかることを期待しています。

DISC 1:
1.ビジューシャ
2.ブエノスアイレスの冬
3.ブエノスアイレスの秋
4.五重奏のためのコンチェルト
5.天使の死
6.天使のミロンガ
7.AA印の悲しみ


DISC 2:
1.アディオス・ノニーノ
2.エスクアロ(鮫)
3.タンガータ
4.チキリン・デ・バチン
5.チェ・バンドネオン
6.ラ・クンパルシータ
7.ロコへのバラード
8.チン・チン
9.ブエノスアイレスの夏

関連記事を検索: ピアソラ

2004年7月 3日 23:44

この記事はどうでしたか? Bad ← 1 2 3 4 5 → Good
評定平均:(3.0) 投票人数:(173)

ソーシャルブックマーク:

« ピアソラ:タンゴ・センセイションズ/AA 印の悲しみ、他/アルバン・ベルク四重奏団 [EMI] | カバーページ | 芥川也寸志:《エローラ交響曲》他 (Naxos) »

トラックバック

CAPTCHA
トラックバックスパム防止のため、末尾の XXXXXXXXX 部分を上記画像の数字に置き換えてからご利用ください。お手数ですがご協力よろしくお願いいたします。

トラックバックが反映するまで時間がかかるかもしれませんし、エラーが出ても受け取れているかもしれません。重複トラックバックはこちらで削除しますので、特にコメントは不要です。

コメント(0)

コメントがありましたらどうぞ

メールアドレス・URL は必須ではありません。
コメントは管理者が承認してからページに反映されます。 もしページへの表示を望まない場合は、その旨一筆添えて下さい。削除は管理者へ依頼して下さい。