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プロコフィエフ:交響曲全集比較
プロコフィエフ:
交響曲全集
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団
DECCA 430 782-2
今回は、ちょっとマニアック度を増して (^^;、プロコフィエフの全集比較をします。プロコフィエフの交響曲は全 7 曲ありますが、CD は 1 番・5 番に集中していて、確かにその 2 曲の出来が抜きんでて素晴らしいのは確かなのですが、それ以外の作品も捨てがたい魅力を放っております。ところがちょっと聴いてみたいと思ってもショスタコーヴィチ並みにディスコグラフィーが充実している訳でもなく、あっても全集の形での流通が多かったりで、なかなか手を出しづらいものがあります。私もいろいろ苦労しまして、いつの間にか全集が 4 セットになっていましたので、購入時の参考にでもなればと思い、書きます。細かく比較するにはスペースが足りませんので荒っぽく行きますが、お許し下さい。今回は曲の紹介も書きません。ちなみに全集は全て 4 枚組です。
まずは筆頭に上げている DECCA 盤ウェラー指揮から。交響曲の他に《ロシア序曲》と《スキタイ組曲》のカップリング。オーケストラはロンドン響(1,5,7 番)とロンドン・フィル(2,3,4,6 番)で、彩度の高い音色はプロコフィエフ向きです。全体的に明瞭な演奏で、オーケストレーションを隅々まで堪能したい派向き。オーケストラを効果的に鳴らしているという意味で映画音楽風。反面、ストレートで健康的な演奏のため、音楽的な深さはあまり感じられません。よってオケがガンガン鳴ってくれれば OK な作品は大成功。特に 2 番など滅茶苦茶カッコ良い演奏です。焦燥感やスピード感を出している第 3 番もなかなか優れています。いまいち捕らえどころがない 4 番と 6 番も、明確な演奏で判りやすく単純に楽しめる演奏になっています。7 番も爽快な演奏で『青春交響曲』らしさを全面に出している秀演です。ちなみに 4 楽章は静かに終わる版と、ロンド主題で派手に終わる版があるのですが、こちらは派手に終わる版を使っていて、演奏内容上相応しい選択だと思います。プロコフィエフの作品を実演で聴くと判ると思いますが、彼の作品では大太鼓の存在感がティンパニ以上にあり、プロコフィエフ=大太鼓という印象を強くしますが、CD ではそんな存在感のある大太鼓はなかなか聴けません。ところがこの DECCA 盤は、今まで聴いた中でもっとも大太鼓の存在感が伝わる録音で、そういう点でもプロコフィエフらしいと思えるのです。幾分単純な解釈の元での演奏ですが、全体のクオリティは高く、輸入盤で 2,500 円程度で入手可能というハイ C/P な全集なので、ファーストチョイスとしてお薦めできます。

次に紹介するのはネーメ・ヤルヴィ/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 (CHANDOS CHAN 8931-34) です。この全集は 4 番のオリジナル版(Op. 47)と改訂版(Op. 112)の両方が聴けるという点がミソです(普通 4 番というと改訂版のこと)。でその肝心な 4 番の演奏はというと、オリジナル版は、ちゃんと譜読みしてないような焦点の定まらないぼやけた演奏。改訂版よりコンパクトなのでまとめやすいと思うのですが、何故にこうも散漫な演奏なのか。一方改訂版の方は、スピード感、切れの良さ、重量感、バランス感、どれも良い出来で、現在ある 4 番の中でも最良の演奏ではないでしょうか。演奏もヤルヴィにしては丁寧で好感がもてます。改訂版第 1 楽章展開部の最後の小節、本来金管は全音符なのですが、ウッドブロックと同じように四分音符で刻んで吹いておりました (ちなみにあと小沢盤も同じ変更をしている)。6 番も 4 番に準じる演奏で、ヤルヴィのねちっこさがプラスに働いています。1 番・5 番も力演で悪くはありません。7 番は、ヤルヴィらしくなく (^^; 優雅で軽やか、大変深みのある美しさで、集中度も高い演奏ですが、処理が甘い部分もあり、今一歩満足し切れません。終楽章のコーダは派手に終わる版です。反面、2 番・3 番は大味で、所々勢いで押し切ったような演奏は、ヤルヴィの悪い部分が出てきているようです。録音は CHANDOS 特有のねっとりとした間接音が演奏全体をマスクしているようで、演奏の細部が埋もれさらに大味に仕上げているので良いとは言えません。CHANDOS はなかなか値段が下がらないので、ウェラー盤に比べると割高感が強いのが難点です。バラでも出ていますので、気になる作品だけチョイスするというのも良いでしょう。

次は小沢征爾/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (DG 463 762-2)。これはベルリン・フィルのプロコフィエフという点で興味をひきます。1 番は鮮やかな演奏なのですが、テンポが遅すぎます。2 番はオケの硬質な音がこの曲にマッチしており、完成度の高い演奏を繰り広げていますが、エモーションを完全に上げきっていない醒めた表現なのが物足りません。3 番もオケの破壊力は素晴らしいですが、そつなくまとめている感じで、やはり物足りない演奏です。4 番も見事な演奏ですが、見事以上のものは感じられません。とこのまま続けでも一緒なので後は割愛。グラモフォンの堅い音色も、音楽をより一層堅く聴かせているように思えます。小沢は曲のドラマ性から 1 歩距離を置き、純粋交響曲のように仕上げているよう聴こえますが、オーケストラが熱演しているだけに解離が激しく、イマイチのめり込めません。しかしオケは良く鳴っているのでベルリン好きとしては満足度は高く、実際私はこの演奏からプロコフィエフの全交響曲に興味を持ちだしたので、全否定する訳でもないのです。解釈はニュートラル、演奏は極上なので、リファレンスとして重宝しています。なお 7 番の終楽章は静かに終わる版です。カップリングは《キージェ中尉》組曲。

最後にロストロポーヴィチ/フランス国立管弦楽団 (ERATO 2292-45737-2)。全体的にメリハリ不足でナローな演奏。部分的に聴くと悪くないのですが、全体を通すと一本調子な感じで面白くないのです。4 番はヤルヴィ盤と同じく 2 種類入っており、オリジナル版の方はなかなか気が利いた演奏でヤルヴィ盤より面白く聴けます。水準は満たしていますし所々光る部分もありますが、他に優れた全集があるのでこれは特にお薦めしません。私も売っ払らおうかと思ったのですが、オコラ・レーベルで有名なラジオ・フランス原盤のようで、肌理が細かく情報量の多い録音は全集中ピカいちなため、手放すわけにもいかないのでした。
取りあえずお薦めの順に書きましたので、迷うようでしたらウェラー盤からお聴き下さい。どれも一長一短ある全集で「これさえ買えば他はいらない」という品がないのが難しいところです。バラで揃えようにもまともな演奏は少ないです。ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団 (PHILIPS) の 3 番は凄かったですが、最近は PHILIPS 自体が低調ですし、全集にまでは発展しそうに無いですね。そもそも今では入手困難ですし。プレヴィンも全集を期待していたのですが、ロス・フィルと仲違いして頓挫しましたしね。デュトワも聴いてみたいですが Decca も駄目だし。一番現実的なのはゲルギエフですか。本当はショルティに録音して欲しかったなぁ。
2002.2.28
付記:
Naxos 盤を買いました。テオドール・クチャル指揮、ウクライナ国立交響楽団。1994 〜1995 年にかけての録音です。今でこそ Naxos の音は良くなりましたが、この当時は風呂オケみたいな残響と、怪しいバランスでいまいちのものが多かったです。このプロコフィエフも直接音と間接音のバランスが人工的で不思議な音響になっていますが、ヌケや鳴りは良く、まあまあです。1 番はもったりした演奏であまり感銘を受けません。2 番は熱演ですが、芸に多彩さが感じられず、もうちょっと作り込んでくれたら良い演奏になったと思えます。3 番はかなり良い演奏ですが、録音が近くなったり滅茶苦茶遠くなったり酷いです。4 番は改訂版を使っています。これは凄い演奏。今までと同じ指揮者同じオケとは思えません。豪快でメリハリが良くカッコ良い演奏になっています。トロンボーンがうるさくバランスはいまいちですが。録音も、良いと言うほどではないですが、かなりまともになっています。雰囲気がいまいち伝わってこないです。4 番はカップリングが交響曲のもととなった作品《放蕩息子》なのも良いです。5 番も 4 番と同様熱演ですが、録音が良くありません。ヴァイオリンも鼻につく猫なで声なのがいまいち。
2002年2月28日 16:17
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コメント(2)
投稿者 千歌音 : 2007年11月25日 17:49
コメントありがとうございます。
全集ボックスになると、カップリングが省かれる場合が多く、そういう点では単品CDで買うのも良いですよね。ヤルヴィ盤は単品で買おうか悩みました。
もうお読みになられたかも知れませんが、ゲルギエフの全集について書いたページもあります。よろしければ読んでやって下さい。
プロコはピアノ協奏曲もかなり集めたので、今度はそれをまとめようかと考えていましたが、モチベーションが下がっております(^^;。
投稿者 渡辺(管理人) : 2007年11月26日 09:26
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どうも、はじめまして。
プロコの全集ってどれも一長一短で困っていたので、
この聴き比べ記事は凄く参考になりました。
私もショルティにはもっとプロコに深く取り組んで欲しかったですね。
「ロメオとジュリエット+古典交響曲」
のディスクを聴く度、そう感じます。
さて、ヤルヴィの交響曲第2番ですが、単品CDでは、
何とカップリングがロメオとジュリエット第1組曲なんです。
このようなカップリングは極めて珍しく、
プロコの幅の広さが手軽に味わえて気に入ってます。