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オルフ:カルミナ・ブラーナ/ラトル [EMI]

rattle_carminaburana.jpg

オルフ:
カルミナ・ブラーナ

サー・サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送合唱団
サリー・マシューズ(S)、ローレンス・ブラウンリー(T)、クリスティアン・ゲルハーヘル(Br)
EMI 7243 5 57888 2

 2004 年、ベルリン・フィルのジルベスター(大晦日)コンサートのライヴ・レコーディングです。私が購入したのは初入荷の 1 月 12 日。録音から 10 日程度で出荷した訳ですね。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートもラッシュ・リリースが定着しましたが、これからジルベスターも同じようになるのでしょうか。それとも今回だけの企画でしょうか。

 録音データをみると、2004 年 12 月 29-31 日となっており、本当の一発録りというわけではなさそうです。きっと本番のテイクを中心に使い、問題のある箇所はゲネプロなどの別テイクを利用しているのでしょう。それにしてはキズの無い演奏なのが凄いです。会場ノイズも聞こえません。そういう意味ではライヴ録音的ではありません。静かな部分は本当に静かなので、そういう部分は本番テイクを待たずに作られていたのかもしません。

 《カルミナ・ブラーナ》は私的にはヨッフム盤 [DG] がスタンダードでして、それ以外にも幾つか聴いてみてもやはりヨッフムに戻ってしまいます。しかしいつまでもヨッフムヨッフムと言っていては進歩がないので、新しい録音を待望していました。今回のラトル盤でようやくヨッフムの対抗馬が現れたかという思いです。

 演奏ですが、まず 1 曲目の "O Fortuna" でラトルの演奏の特徴が現れています。この曲は主題部のテンポが 120(〜132)-144-160 とスピードアップするよう指示されていますが、ラトルの演奏では 144-163-189 とかなり大胆にスピードアップしています。このようなメリハリのある解釈が全体を貫いており、テンポ感やダイナミクスを大きく付けるという曲作りになっています。あと余談ですが、主題部でのオーボエに上倍音が強調されたような妙な音が聞こえます。繰り返しである 25 曲目も同じ。なんの音でしょう。

 また先回の《春の祭典》でもそうでしたが、弱音部分の美しさにかなり神経を使っているようです。《カルミナ・ブラーナ》というと、扇情的な大オーケストラのマッシブな部分ばかりが取りざたされ、また「俺のこの土俗的なパワーを聴け!」といった演奏が多いですが、ラトルの演奏は「この静謐な弱音部分を堪能してよ」と言わんばかりに、静かな部分を実に静かな雰囲気で演奏しています。9 曲目の "Reie" など、主題が pp - mp - ppp で繰り返されますが、ppp の部分は本物のソットヴォーチェで、聴こえるか聴こえないかの限界まで音量を落とします。それでも綺麗に安定感を保っているのです。第三部は静かな部分が多くさらに繰り返しばかりなので、いつもならだれてくる部分ですが、アッという間に時間が過ぎます。またそれだけ静かな部分に気を遣っているので、いっそうパワフルな部分の開放感が生きてくるのです。

 ラトルの演奏は、中世的な雰囲気や土俗的なものより、都会的な洗練さを感じます。つまり現代音楽の系譜として、ストラヴィンスキーからベリオなどへと続く線上に位置する作品であることを意識せずにはいられません。もちろん作曲者が盛り込んだ中世や土俗的なものはそのまま滲み出ているのですが、それらを洗練し「"超" 現代曲」として仕立て上げたオルフの作品を、きっちりと「"超" 現代曲」として演奏するコンテクストの間違いのなさというものを印象づけられました。例えば、13 曲目の "Ego sum abbas" のバリトンは、キャシー・バーベリアン歌うベリオの《セクエンツァ III》を思い起こしますし (作曲史的にはベリオのほうが後なので、演奏史的な逆引用になるでしょうが)、18 曲目の "Circa mea pectora" のオスティナートは、無論ストラヴィンスキーの《詩篇交響曲》の記憶を呼び起こします。

 録音は、冒頭部は広がり感があまりなくティンパニの迫力だけが目立つ音でぶっ飛びましたが、それ以降は結構まともな録音。コントラストの強い音というか、楽音以外は目立たない録音ですが、悪くはありません。EMI も最近良くなりましたね。レーヴェルによる特徴が薄れているとも思えますが。またラッシュ・リリースなため、CD ジャケット等に演奏時間の表記はありません。

 ラトルもリズム感の優れた指揮者と思いますが、どちらかというとシャープなリズムで、肉体的なリズム感とは違うような気もします。その辺ではやはりヨッフム盤に惹かれる部分もありますが、ヨッフム盤を聴き直してみると、思っていたほどでは無かったような気もしてきました。しかし、どちらが優れているかというのは設問自体が間違っているでしょう。楽しめる盤が増えたことを素直に喜びましょう。

 

関連記事を検索: EMI オルフ カルミナ・ブラーナ ベルリン・フィル ラトル

2005年1月20日 18:13

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トラックバック時刻: 2005年3月 7日 18:54

コメント(2)

トラックバック、ありがとうございました。

それから、こちらからの余計なトラックバックの削除もありがとうございました。

文字化けの件ですが、こちらでは全体の削除しか出来ないようなのです。気になるようでしたら、タイトルを英語表記にして再TBして頂ければ、と思います。

貴ブログには、他にも私のものと同じアイテムを扱ったものがありますので、たのしく拝見させていただいております。今後ともよろしくお願いします。

投稿者 山江晶 : 2005年1月24日 11:59

「器楽と魔術的映像を伴う独唱者と合唱のための世俗的歌曲」というサブタイトルのついている「カルミナ・ブラーナ」は、本来踊りを伴った舞台形式の作品として書かれたもの。オルフの構想した「カルミナ・ブラーナ」を求めて活動して10年、私たちO.F.C.は年末にオルフの劇的三部作を一挙上演致します。是非、舞台をご覧頂き、「カルミナ・ブラーナ」の世界を堪能してください。

投稿者 O.F.C. : 2005年11月17日 04:55

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