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R.シュトラウス:《英雄の生涯》《町人貴族》/ラトル [EMI]

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R. シュトラウス:
交響詩《英雄の生涯》 op.40
組曲《町人貴族》 op.60

サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
グイ・ブラウンシュタイン (solo-Vn)
EMI TOCE-55797-98

 《英雄の生涯》は 05 年 9 月 23-25 日、ベルリンのフィルハーモニーでのライヴ収録。とてもライヴとは思えない、会場ノイズ皆無の録音です。よーく耳をこらすと、超遠くで咳払いが聞こえなくもないので、リハーサルなどで録音した素材をメインに使っているということはないでしょう。音も超オンマイクで、綺麗に録れてはいるのですが、音場感や雰囲気はあまりよくありません。先回の「ウェルザーメストのアルプス交響曲」よりは良いですが、やはりラジカセや iPod 向きの録音のように思えます。40Hz あたりの超低域を持ち上げてやると雰囲気が出てきましたので、それで聴きました。

 ラトルの解釈はオーソドックスなものだと思いますが、その普通なものを深く掘り下げ、目鼻立ちをくっきりさせ、ドラマ性を強調した演奏となっています。ラトルなんだから何か新しい音楽を聴かせてくれるだろうと期待していると拍子抜けしてしまいますが、ラトル=リズミックで斬新な演奏という先入趣はもう通用しないということです。解説に書いてありましたが、ラトルはこの録音の前にもバーミンガム市響やウィーン・フィルと《英雄の生涯》を取り上げており、入念な譜読みの成果が今回のベルリン・フィルとの演奏に結実していることは、録音を通して充分感じられます。

 例えば初っぱな "英雄" の 1'35"、低弦から始まり次々とリレーされていく旋律の流れの良さ (特にヴィオラソロ〜クラリネット〜ホルン〜弦の受け渡しが絶妙)、またその背景の伴奏のバランスなど、かなり綿密に設計された演奏だということが聴き取れます。万事がこの調子で、音楽が有機的に隙間なく呼応し合っている演奏です。"英雄の妻" の後半や "英雄の業績" でその練りに練られたバランス感覚が本領を発揮しており、最も効果的に響いてきます。"英雄の業績" では自作から引用された旋律を強調するのが普通ですが、この曲本来の主題も強調され新鮮に聴こえます。

 "英雄の戦場" はライヴだからといって勢いで突き進むことはなく、表現をわきまえた余裕の見える演奏となっています。下手すると安っぽく聴こえてしまう部分もある曲ですが、その辺は巧く処理しています。録音的に小太鼓が前面に出ておりオケの迫力がマスクされてしまっているのが、勿体ない。

 正直言って、優等生的で物足りない、上手すぎて面白くないという印象を受けなくもなのですが、超ハイレベルなことでも事も無げにこなすがために大したことをしてないように見えてしまうのと一緒で、やはりこれは凄い演奏だと思うのです。ラトルの演奏を聴いた後、他の演奏を聴き直すと、完成度や集中度で物足りなく感じます。スタンダードとはこういう演奏なのでしょう。

 ラトルのたっての希望でカップリングされたという《町人貴族》は、大編成の後に聴く小編成の魅力が瑞々しい。演奏は、比較する盤など持ち合わせていないのですが、明るく鮮やかな演奏で、3 曲目の金管のソロを聴いただけでもこの演奏には太鼓判を押せます。様々な趣向が凝らしてあり聞き飽きしない楽しい曲ですが、そう何回も聴きたくなるというものでは無いかも。録音は《英雄の生涯》と同時期に録られている (ライヴではないが) ので、音の調子は似ています。


Producer: Stephen Johns
Recording Engineer: Mike Clements
Technical Engineers: Andy Beer, Richard Hale

関連記事を検索: EMI R. シュトラウス ベルリン・フィル ラトル 管弦楽曲 英雄の生涯

2005年11月26日 21:40

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