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マーラー:交響曲第 5 番/ラトル [EMI]

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マーラー:
交響曲第 5 番 嬰ハ短調

サー・サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
EMI 7243 5 57385 2 3

 前回見送らせていただきました、ラトルのマーラー 5 番です。いわゆるネタバレを含んでますので、これから聴く予定のあるかたは、読まない方が新鮮に音楽を楽しめると思います。2002 年 9 月 7〜10 日、ベルリン・フィル音楽監督就任後初のコンサートのライヴ・レコーディング。収録から 1 ヶ月程度で販売されるなんて、ニューイヤーなみの早さですね。EMI はラトル関係のリリースに気合い入れているようです。

 ラトルはこの曲をかなりの難曲と考えていたようで、5, 8 番以外はすでに録音がありますが、この曲の取扱は慎重に、機が熟すのを待っていたようです。それだけにこのアルバムで聴けるマーラーはかなり衝撃的です。ラトルのマーラーはクリティカルなアプローチを特徴としてますが、今回は国際グスタフ・マーラー協会副会長であるクビーク教授校訂によるクリティカル・エディションの使用に行き着いたようです。これは従来の版とアーティキュレーションやダイナミクスなどにかなりの変更があるようですが、最大の違いは 3 楽章のオブリガート・ホルンがコンサートマスターの前で立って吹くよう指定されていることでしょう。他は実際に楽譜を比較してみないと、音を聴いただけではどこまでが楽譜の指示でどこからがラトルの解釈なのか判別しにくいですが、新しい研究結果がかなり盛り込まれているんじゃないかと思えるほどアグレッシブな演奏になっています。

 とにかく全編ルバートしまくりという感じで、こういうフルトヴェングラー・タイプの指揮が嫌いな人にはとても評価できない演奏でしょう。しかし指揮者としてのマーラーは、基本テンポをかなり揺らし、拍子もきっちり取らず主にアクセントを強調していくという指揮ぶりだったようです。そういうエピソードをご存知の方なら、「マーラーはきっとこういう演奏をしていたんだろうなぁ」と思えてくるような、それほどマーラーを感じさせる演奏なのです (ま、本当にマーラーが振ったのなら、もっととんでもない演奏になっているのかもしれませんが)。当然マーラーの音楽もそういう風にテンポが変化することを前提とした曲づくりになっている訳です。音楽の流れの千変万化さは、マーラーを初めて聴いたときに受けた斬新な衝撃を甦らせてくれます。そしてこういう激情型の指揮は、かつての手兵バーミンガム市響では十分為し得なかった表現でしょう。ベルリン・フィルだからこそこういう表現に説得力を持たせられると思います。マーラーの語法に慣れっ子になってしまった演奏家と聴衆に、再びマーラーの面白みを見せつけてくれるとともに、まだ荒削りだった古い時代の演奏からは聴けない "洗練さ" を加味した、時代が発展しつつも一廻りしたような印象をもつ演奏です。

 さて、細かいところを語り出すときりがないので端折りまして、3 楽章のオブリガート・ホルンについてです。指揮者の脇に立つことによる効果は視覚的なものだけでなく、録音でもその効果は十分に伝わってきました。ホルン・コンチェルトのようです。立って吹くことにより音も大きく明瞭になり、ホルンセクションに音が埋もれることもなく存在感が数段アップしています。こういう風にやられると、今までのマラ 5 のイメージからがらりと変わってきます。ここまでホルンをクローズアップして良いのか論議を呼びそうですが、とにかく今まで捕らえどころの無い印象であったこのシンメトリー構造の中心となるべき楽章に、大黒柱が立ったようなものです。その存在感は交響曲の中の声楽付き楽章に匹敵する程だと思います。ホルンのシュテファン・ドールのパワフルな演奏も凄まじいです。

 あと、特に面白いなと思いましたのは、5 楽章です。ロンド主題の勢いあるフガートに対応するように度々現れる 4 楽章の主題。普通の演奏だと 5 楽章の流れの上でそのアダージェットが回想的に現れる程度ですが、ラトルの演奏ではロンドの勢いが失速するかしないかのギリギリのラインまで、段階的に曲の雰囲気をアダージェットの世界に振っていきます。これほどアダージェットの雰囲気を出した演奏は初めて聴きました。それだけにロンド主題がますます勢いを増し、最終的にそのコントラストは 2 楽章の再現である頂点のコラールをより熱狂的なものにするのです。弦楽器のビートの利いた歯切れ良さもラトルらしくカッコ良いし、ヴァイオリンが両翼配置なのも効果的です。5 楽章は実に見事な演奏で、終了後にブラボーの嵐が収録されていないのが物足りなく思える程です。

 国内盤、及び輸入盤のコレクターズ・エディション(?) にはラトルのインタビューも入っているらしいですが、私の買ったのは輸入盤の通常版。どなたかインタビューの内容を教えてくれませんか〜 (^^;。

 ティルソン・トーマス/SFS のマーラー 1 番も届いたので、次回はそれを書くと思います。では。

2002.11.2

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2002年11月 2日 11:29

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