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プロコフィエフ:交響曲第 5 番他/ラトル [EMI]
交響曲第 5 番 変ロ長調 op. 100
スキタイ組曲 Op. 20 (アラとロリー)
サイモン・ラトル指揮
バーミンガム市交響楽団
EMI CDC 7 54577 2
このところ個人的にプロコフィエフの交響曲にはまっているので、今回はそれを取り上げます。出来ることなら 2 番や 3 番などを書きたいところですが、全集比較になりかねないので (^^;、普通に 5 番を取り上げました。ひょっとすると次回は全集比較をするかもしれません。
第 5 交響曲が作曲されたのは 1944 年で、プロコフィエフ的には後期の作品となります。たまにこの曲の解説で「戦争交響曲」と呼んでいるものを見かけますが、そういった表題的性格は一切無く、単に戦時中に完成されたというだけの純粋な交響曲です。この曲から戦争の影を読みとるのは自由ですが、私には普通の曲にしか聴こえません (^^;)。《ロメオとジュリエット》と同質の躍動感や官能性の方をよっぽど強く感じます。
この曲は交響曲というには主題がメロディックすぎて、どこまで展開されても原型の持ち味を明確に保っているため、下手をするとどこを切っても変わり映えのしない演奏になってしまいます。その同質性に変化を与えているのはオーケストレーションであって、そのオーケストレーションによる雰囲気の違いを敏感に嗅ぎ取って音楽に変化をあたえるという作業が重要になります。ラトルの演奏はその点非常に巧妙で、特にドラマ性が乏しいと感じていた第 1 楽章からこれほど充実したドラマを聴いたのは初めてでした。プロコフィエフが本当にここまで考えて作ったのか疑わしいほどの繊細な表現をしています。第 2,4 楽章のテンポ感・リズム感も素晴らしく、テンポの切替もかなりカッコ良いです。そしてプロコフィエフの作品の中でも最高に美しい第 3 楽章からも、初期のシェーンベルクを想起させるほどの色彩感や倒錯的な美意識などを引き出しており、その奥深い表現に感嘆せざるを得ません。バーミンガム市響も、その弦楽器の艶やかさと管楽器の見通しの良いアンサンブルはまさに理想的な状態と言えるでしょう。
カップリングの《スキタイ組曲》は、ロシア・バレエ団のディアギレフより、次なる《春の祭典》ということで若きプロコフィエフに委嘱されたバレエ音楽《アラとロリー》が、結局実現せずにオーケストラ組曲として日の目をみることになった作品。この曲のもっとも暴力的な演奏ではアバド/シカゴ響 (DG) が最右翼で、これを越えるものはいまだにありませんが、このラトル盤では非暴力的な部分の繊細なオーケストレーションの表現が魅力的で、アバド盤からは聴けない有機的な音楽を堪能できます。暴力的な音楽も決して物足りない訳でなく、シカゴ響の切れ味に対してバーミンガム市響はマスのパワーで迫ってきます。2 曲目冒頭のトロンボーンによるバーバリスティックなリズム音形なんて、ど迫力で絶品です。アバドの演奏では最初 2 曲を聴けばもう十分って感じですが、ラトルの演奏なら最後まで飽きません。
まるでマーラーのスコアに対峙しているようなラトルのプロコフィエフですが、ドイツ・オーストリア音楽のような厳格さがプロコフィエフの軟派な音楽に説得力を与え、今まで無意味に思えていた装飾的なオーケストレーションがまさに本質であって、またいかに面白いかを思い知らされた演奏です。
2002.2.15
2002年2月15日 11:29
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