« マーラー:交響曲第 7 番/ティルソン・トーマス [BMG] | カバーページ | オルフ:カルミナ・ブラーナ/ラトル [EMI] »
シノーポリ私的ディスコグラフィ Part 1
シノーポリのディスコグラフィを調べてみようとググってみましたが、お目当てのサイトに巡り会えませんでした。シノーポリ・ファンは決して少なくないと思うのですが…。ということで、自分の持っているディスクを年代順に並べ、コメントしてみようと思います。全ディスクの何割持っているのかも判りませんが、それなりに網羅できるのではと、考えています。
北ドイツ放送交響楽団
'79.8-9 ハンブルグ−ラールシュテッド、音楽スタジオ I
423 246-2 [DG]
この辺がシノーポリのデビュー盤か。マデルナはシノーポリの師。シノーポリは 75 年にブルーノ・マデルナ・アンサンブルを設立し指揮者デビューした。このアルバムはマデルナの作品を作曲家兼指揮者である弟子が振ったというもので、ネームバリュー的にはマデルナの方が上だったのでしょう。シノーポリ目当てでこの盤を買ってはいけない。"いわゆる" 現代曲なのでマデルナの音楽に興味が無いのなら敬遠するのが無難。シノーポリならではという部分が聴けるものではありません。
この手の曲は録音が命ですが、グラモフォンの録音は在り来たりな音響しか作り上げていません。打楽器の明滅するシグナルや、弦楽器のクラスター風な絨毯など、オーディオ的な興味を惹く音楽ですが、音響の醍醐味まで伝える録音ではありません。S/N も良くなく、うっすらハム音が乗っている部分もあります。私が持っているのは AAD のマスターなので、最近再発売されたものが ADD で改善されているなら、買い換えも考えなくもありませんが。
シェーンベルク:室内交響曲 op. 9
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
マウリツィオ・ポリーニ (P)(Manzoni)
'80.9 (Manzoni), '81/6 (Schoenberg)、ベルリン、フィルハーモニー
423 307-2 [DG]
シノーポリはベルリン・フィルには度々客演していたようですが、正規録音としてはこれが唯一ではないでしょうか。FM でマーラーの 6 番が放送されたことがありましたが、PO との録音より鬼気迫るものがある演奏で、BPO ともっと録音してくれれば良かったと思います。マンツォーニの《質量》は「ヴァレーズ讃」というサブ・タイトルが付いていますが、ヴァレーズというよりはリゲティ風な音楽。ポリーニのピアノは強烈なのですが、全体として錯綜しているとしか思えない音楽で、凄い演奏ですが面白い曲ではないでしょう。
シェーンベルクの室内交響曲は、室内楽というよりは交響曲に分類したくなる演奏。奏者の自発性や小編成の機動力を生かした演奏というより、交響作品としての緻密な構成を体現するために、シノーポリが完全に掌握しなければ済まないという感じ。それによりエキサイティングで挑戦的なスリリングな展開は聴かれませんが、構成感や統制された雰囲気など「シノーポリの音楽」としての聴き所は随所に目立ちます。ベルリン・フィルの硬質な音はこの曲に冷たい雰囲気を付け足しますが、これはこれで貴重な記録として価値があるでしょう。
チェコ・フィルハーモニー/プラハ・フィルハーモニー合唱団
ルチア・ポップ(S)、ヴォルフガング・ブレンデル(Br)
'82.3 プラハ、Rudolfinum
431 598-2 [DG]
この曲はあまり聴いたことがないので、果たして演奏史上どの程度の名演なのかピンとこないですが、丁寧な曲作り、合唱の見事さ、スケール感の大きさなど、なかなかの演奏ではないかと思います。歯切れの悪い評価しか出来ないのは録音の悪さのせい。合唱はスケール豊かに録られているのですが、オケが遠く、弦楽器はほとんど聴こえないという部分が多いです。の割りにティンパニやハープはオンで聴こえるし、バランスが良くないし、全体的にこもり気味。録音の悪さのせいで絶対的な評価が下せない盤です。リマスターリングでバランスが改善されるのなら、名演として後世に語り継がれる可能性は大。
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、同合唱団
カプッチッリ (Br)、ドミンゴ (T)、ディミトローヴァ (S)、ネステレンコ (Bs) 他
'82.5.2-9 自由ベルリン放送大ホール
413 321-2 (Highlights) [DG]
シノーポリのオペラ録音第 1 弾はヴェルディの出世作。実はこの作品私良く知りません。全曲聴いたこともありません。しかも私が持っているのはハイライト盤。なのでちゃんとした評価は差し控えさせていただきます。しかし演奏はダイナミックで、とてもヴェルディの初期作品とは思えない雰囲気を持っています。《ナブッコ》録音の中でも満足度の高い演奏ではないでしょうか。全曲盤欲しい。でも、今はこの曲を勉強する気持ちじゃないなぁ (^^;。
交響曲第 2 番 ハ長調 op.61
《マンフレッド》序曲 op.115
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
'83.6 ウィーン、ムジークフェラインザール
POCG-1192 [DG]
シューマンの交響曲というと『全集』という形でパッケージングされるのが一般的と思いますが、単発でそれも 2 番だけというのが唯事じゃないと思いました。そしてシューマンの 2 番がこんなにも面白い曲だというのを発見させてくれた演奏でもあります。ライナーノートでシノーポリは精神科医的な視点でシューマンを叙述しており、これはこれで面白い内容なのですが、実際の演奏はそういう「分析=静的」なものとは逆の、きわめてダイナミックでエモーショナルなものになっています。演奏のメリハリの良さは理想を遙かに越え、ダイナミクスやテンポの絶妙で的確な変化、シノーポリもシューマンの曲の不自然さや不統一感を指摘しているのですが、それをまったく感じさせないバランスの良さとストーリーテリングの巧さ、全てがシノーポリの最良の部分を表出しています。シノーポリの分析は、演奏者としてではなく、自身が作曲者になりきるための過程なのだと思います。自分が作曲者になりきれば、インスピレーションは作曲者自身のものとなるわけですから。
メンデルスゾーン:交響曲第 4 番《イタリア》op. 90
フィルハーモニア管弦楽団
'83 頃
410 862-2 [DG]
これがフィルハーモニア管との初レコーディングではないかと思います。とにかく時間をかけてじっくりとリハーサルしたことを伺わせる、磨きの掛かった一枚。《未完成》は暗く重く、しかし潤いと艶を忘れない美しい名演。細かい音の動きまで徹底的にこだわり、いつまでも歌を忘れない、強烈な物語性を発散しています。フィルハーモニア管とのレコーディングで特徴的な残響豊かなホールトーンが特徴的で、音楽の雰囲気も決定しているように思えます。続く《イタリア》は、その開始部の目映さが印象的な演奏。カップリングが大成功しています。この演奏を聴くと、もっともっとシノーポリを聴きたくなります。
《運命の力》序曲、《アイーダ》前奏曲、《アッティラ》前奏曲、《ルイザ・ミラー》前奏曲、《椿姫》第一幕への前奏曲、第 3 幕への前奏曲、《仮面舞踏会》前奏曲、《ナブッコ》序曲、《シチリア島の夕べの祈り》序曲
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
'83.12.19-22 ウィーン
411 469-2 [Philips]
シノーポリが一般的に知られるようになったのは、この盤からではないでしょうか。かく言う私も、この盤でシノーポリという指揮者を知りました。全体的にシノーポリの粘着質な演奏が独特の味でして、ウィーン・フィルの音色と相まって奥深い音楽を展開しています。《運命の力》序曲は、冒頭の金管など後年の全曲盤の方が良いなと思いますが、ウィーン・フィルらしい美しさも見逃せません。《椿姫》第 3 幕への前奏曲は、旋律だけでなく雄弁に語る伴奏が凄い。《ナブッコ》序曲は、やや雑な演奏ですがメリハリがあって格好良いです。《シチリア島》は調性を見失うような演奏ですが、変に健康的な演奏でなく、シェーンベルク調なくすんだパレットが味わい深い。セピア調の雰囲気のある録音ですが、ちょっと地味。もう少し色艶が欲しいところです。

ベートーヴェン:《フィデリオ》から囚人の合唱
ウェーバー:《魔弾の射手》から狩人の合唱、村人達の合唱
ワーグナー:《タンホイザー》から大行進曲
ヴェルディ:《ナブッコ》からヘブライの捕虜たちの合唱
《十字軍のロンバルディア人》から十字軍兵士と巡礼の合唱
《マクベス》からスコットランド亡命者の合唱
《トロヴァトーレ》からアンヴィル・コーラス
《アイーダ》から凱旋の合唱、勝利の合唱
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団・管弦楽団
合唱指揮:ヴァルター・ハーゲン=グロル
'84.6.23-25 ベルリン・イエス・キリスト教会, '82.5.2-9 自由ベルリン放送大ホール(ナブッコ)、《マクベス》はフィリップスの全曲盤から
F35G 50186 [DG]
シノーポリとオペラの相性の良さを強く印象づける一枚。後に首席指揮者に任命される (結局は就任しなかったが) ベルリン・ドイツ・オペラとのレコーディングですが、オケ・合唱団との相性も良く素晴らしい演奏になっています。「オペラ合唱曲集」というマイナーな内容ではいまいち訴えるものが弱いような感じがするかもしれませんが、《タンホイザー》の大行進曲や《アイーダ》の凱旋行進曲など超有名曲だがコンサートピースとしてはなかなか取り上げられない曲が聴ける、贅沢な企画といえるでしょう。この CD を聴くと、どれも全曲聴いてみたくなる完成度なのが、かえって悲しい。
《ニュルンベルグのマイスタージンガー》第 1 幕への前奏曲
《さまよえるオランダ人》序曲
ジークフリート牧歌
《ローエングリン》第 1 幕への前奏曲、第 3 幕への前奏曲
ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
'85.10 ニューヨーク州立大学パーチェス校、パフォーミング・アーツ・センター
419 169-2 [DG]
この時期、ニューヨーク・フィルはいまいちカビ臭い音色 (^^; をしていたと記憶していますが、シノーポリが振るとこうも鳴るのかと感心した一枚。当時はフィルハーモニア管で録音してくれればと考えたものでしたが、今聴き直すと NYPO の重めの音も悪くないです。《マイスタージンガー》は華やかさより重厚な感じの演奏。《オランダ人》はダークな雰囲気が強調されています。《ジークフリート牧歌》は大きい編成での演奏。オケの音が濁っているのが残念。《ローエングリン》も息の長い "うねり" は素晴らしい効果をあげていますが、オケの音色が固い。全般的に「シノーポリらしさ」は薄く、独特の色彩感や語り口はあまり聴けず、「ニューヨーク・フィルのワーグナー」という感じが強い。何だかんだ言って NYPO の雑さがマイナス要因として強いアルバム。ジャケットのシノーポリのシルエットが印象的。
2005年1月19日 14:17
この記事はどうでしたか? Bad ← 1 2 3 4 5 → Good
評定平均:(3.0) 投票人数:(420)
« マーラー:交響曲第 7 番/ティルソン・トーマス [BMG] | カバーページ | オルフ:カルミナ・ブラーナ/ラトル [EMI] »
トラックバック
トラックバックスパム防止のため、末尾の XXXXXXXXX 部分を上記画像の数字に置き換えてからご利用ください。お手数ですがご協力よろしくお願いいたします。
トラックバックが反映するまで時間がかかるかもしれませんし、エラーが出ても受け取れているかもしれません。重複トラックバックはこちらで削除しますので、特にコメントは不要です。
このリストは、次のエントリーを参照しています: シノーポリ私的ディスコグラフィ Part 1:
» [classical music]シノーポリ私的ディスコグラフィ Part 1 from おかか since 1968
http://www.musicking.co.jp/mt/trb_cla/archives/02_cd/sinopoli_discs_1.php 私は実は少し... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年2月 1日 11:52

コメントがありましたらどうぞ
メールアドレス・URL は必須ではありません。コメントは管理者が承認してからページに反映されます。 もしページへの表示を望まない場合は、その旨一筆添えて下さい。削除は管理者へ依頼して下さい。