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シノーポリ私的ディスコグラフィ Part 2

sinopoli argerich beethoven
ベートーヴェン:
ピアノ協奏曲第 1 番 ハ長調 op. 15、第 2 番 ロ長調 op.19

マルタ・アルゲリッチ (p)
フィルハーモニア管弦楽団
'85.5 ロンドン、ウォルサムストウ・タウン・ホール
415 682-2 [DG]

いきなりベートーヴェンしかもアルゲリッチと…、シノーポリからは縁遠いと思われる選曲に驚かされたディスクです。結局単発の企画でしたし、シノーポリもベートーヴェンはそれほど録音しませんでしたので、普通のクラシックファンはこの CD は買わないんじゃないかと思えますが、しかし演奏は凄いです。ベートーヴェン的かと言われると小首を傾げてしまいますが、逆にベートーヴェンとは思えないほど深い潤いがあり、さらに若々しさと明るい輝きが特徴的な演奏です。ソロが登場するとオケは伴奏に徹する曲ですが、それでもアルゲリッチのベートーヴェンというよりシノーポリのベートーヴェンという印象が強い。オケだけによる導入部が長い曲ですが、そこでしっかりと音楽を作ってソロに引き渡していおり、その後もソロと共同で音楽を作り上げていく、協奏曲ではなくて共奏曲といった趣の演奏です。アルゲリッチのピアノも楽しそう。

sinopoli mintz beethoven
ベートーヴェン:
ヴァイオリン協奏曲第 1 番 ニ長調 op. 61
ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第 1 番 op. 40、第 2 番 op. 50

シロモ・ミンツ (Vn)
フィルハーモニア管弦楽団
'86.9, '87.4 (Romances) ロンドン、ウォルサムストウ・タウン・ホール
423 064-2 [DG]

またまたベートーヴェンのコンチェルトです。今度はミンツとの共演。この曲は超有名曲なので知ってはいますが、CD もこれしか持ってませんで、詳しくありませんです。この CD も購入して 1 度聴いて、ずっと片づいていました (^^;。改めて聴き直してみましたが、やっぱりあまり面白くない演奏です。丁寧な演奏なのは良いのですが、オケが厚ぼったく曲想への反応も悪く、シノーポリにしてはメリハリの無い演奏。おそらくこの曲はこんなどってりとした音楽では無いと思うのですが、他のも聴いてみないと何とも…。アルゲリッチみたいにリードしてくれる人がいないと、ベートーヴェンは駄目かな。音は綺麗で録音も悪くないので総合的にはまあまあとしておきましょう。

sinopoli elger symphony No.2
エルガー:
交響曲第 2 番 変ホ長調 op. 63

フィルハーモニア管弦楽団
'87.3 ロンドン、ウォルサムストウ・タウン・ホール
423 085-2 [DG]

イギリスのオケと仕事をしているので避けては通れなかった曲でしょうか。でも、堂々とした 1 番ではなく幾分病的な 2 番から録音したのはシノーポリらしいと思えます。いや、もともとそんなに病的な曲では無いのかも知れませんが、シノーポリが振ると病的な部分が強調されます。プレヴィンやショルティを聴くとこんなに倒錯的では無いですしね。イギリス国民やイギリス音楽好きからするととても認められない演奏かもしれませんが、私はこの演奏から入ったこともあり大好きです。最初聴いたときはスッゲーヘンテコな曲と思いましたが、すぐにシューマンの第 2 交響曲のような怪しげな雰囲気とこってりとして装飾過剰なオーケストレーションの虜になりました。バーナード・ハーマンの映画音楽も思い起こします。特に 3 楽章のトリオは『めまい』そのもの。ヴァイオリン対向配置にこだわっていた時期でもあり、この曲でも効果をあげています。ドラマ性十分な派手な演奏で、複雑な曲を単純化することなくより一歩踏み込んだ解釈で、効果的に表現しています。

lou salome
シノーポリ:
歌劇《ルー・ザロメ》組曲第 1 番、第 2 番

シュトゥットガルト放送管弦楽団
ルチア・ポップ (S)、ホセ・カレーラス (T)
'83.11 (1), '87.2 (2) シュトゥットガルト、ヴィラ・ベルク
415 984-2 [DG]

シノーポリ唯一の自作自演盤。結構レアな音源だと思っていたのですが、追悼盤ということで復刻されたので、それほどレア度は無くなりましたね。ルー・ザロメはパウル・レー、ニーチェ、フロイトらを魅了した女性。かなりの才女だったようです。この組曲ではポップはもちろんルー・ザロメ役、カレーラスがパウル・レー役です。音楽はベルクを、それも《ルル》を激しく思い起こすものです。ベルク的ではない音調の部分もありますが、それ系の音楽の寄せ集めのようで、シノーポリの個性として際立っている音楽とは思えません。それでもベルクの "精神的なイタキモ状態" をさらにグツグツと煮込んだような音楽は、私は魅力的に思います。シノーポリも指揮者としていい仕事をしています。第 1 組曲は第 1 幕の最終場よりとられており、2/3 が歌付き。じっくり聴けて良いです。第 2 組曲はルー・ザロメと彼女のパートナー達との関係を表す場面の断片を、6 つの曲に仕上げています。歌は最後の曲にルーだけが出てきます。ダイナミックな曲とかあり面白いですが、全曲のハイライトシーンを断片的に繋げた予告編のようなやや物足りない曲です。全曲を聴いてみたい。

sinopoli zarathustra
R. シュトラウス:
ツァラトゥストラはかく語りき op. 30
死と変容 op. 24

ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
'87.5 ニューヨーク、マンハッタン・センター
423 576-2 [DG]

シノーポリの R. シュトラウス第一弾。同じくニューヨーク・フィルと組んだワーグナーではあまりシノーポリらしさを感じませんでしたが、こちらはど派手でねちっこく、シノーポリらしさがムンムンの演奏。テンポ設定が独特で、餅みたいなすっごく粘りのあるテンポです。こんな病的なテンポにも関わらずニューヨーク・フィルは完全にシノーポリに付いていき、思うがままの音響を提供しているのが凄い。ニューヨーク・フィルの意地といったものを感じます。聴き所はいっぱいありますが、《ツァラトゥストラ》では『回復しつつある者』後半の 9/4 と 3/2 のポリリズム的な部分を、ちゃんとポリリズムとしてぶつけている部分がエキサイティング。宇宙的で形而上的な演奏が多い曲ですが、シノーポリのは人間くさく、超人といえども人間であるという思想が伝わります。オルガンとオケのピッチが合ってないのが気持ち悪いですが。R. シュトラウス版《ロメオとジュリエット》である《死と変容》もねちっこい演奏ですが、こちらも素晴らしく、《ツァラトゥストラ》同様リズムのぶつかりを丁寧に描出している演奏です。シノーポリの R. シュトラウスで、もっとも聴き応えのある 1 枚。

sinopoli bolero, la mer
ラヴェル:
ボレロ
ダフニスとクロエ第 2 組曲
ドビュッシー:
交響詩《海》

フィルハーモニア管弦楽団
'88.8 ロンドン、ワトフォード・タウン・ホール
427 644-2 [DG]

《ボレロ》はちょっと悲惨な演奏。伴奏のクレシェンドをしかけるのが早くソロが埋没気味。特にトロンボーンのソロは可哀想に思えるくらい。フィルハーモニアのセンスが無いのかシノーポリが悪いのか、音楽の安定性も悪く、細かい凹凸が目立つ演奏。またトランペットのリズムがまるでテンポに合ってないのがさらに足を引っ張ります。旋律の無い部分でリズム形を強調するのは良いのですが、メロディーとのバランスが取れてない。指揮者が仕事しすぎの演奏かも。

続く 2 曲は、うって変わって名演です。《ダフニスとクロエ》は音楽的な濃密さや雰囲気など申し分無い演奏。合奏の中浮かび上がるソロや合奏での旋律の歌わせ方など立体感ある曲作りで完璧。ヴァイオリン対向配置も効果的です。見せ場である『全員での踊り』も巨大なうねりと躍動感が素晴らしい。《海》は混沌とした演奏が多いと思いますが、シノーポリは常にテンポ感を意識した曲作りで、その容易く変化する波動の上に上手く曲を載せることで、単に「海の雰囲気」で終わることなく、ミクロに描かれた波が様々なモードでぶつかり覆い尽くしているこの曲を微細に描き出しています。あくまでもこれはベースの話しであり、この上にダイナミックな演奏が展開されていることは言うまでもありません。最後の音もインテンポで楽譜通り伸ばして切っているのが格好いい。尚、3 曲目の後半、色々と版の問題が取りざたされる部分は、ほぼデュラン版に従っています。

sinopoli mussorgsky ravel
ムソルグスキー:
展覧会の絵 (ラヴェル編曲)
禿げ山の一夜 (リムスキー=コルサコフ編曲)
ラヴェル:
優雅で感傷的なワルツ

ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
'89.12 ニューヨーク、マンハッタン・センター
429 785-2 [DG]

ニューヨーク・フィルもこんな綺麗な音が出せるのかと驚いた 1 枚。というか、これを書くために聴き直している最中、ずっとフィルハーモニア管だと思っていました。冒頭のトランペットから艶と張りのある音で (ちょっとビブラートが余計だが)、カタコンブの金管も良い音しています。ムソルグスキーに関してはニューヨーク・フィルにお任せしたような感じの演奏で、シノーポリならではという聴き所はあまりありません。《展覧会の絵》は全体的に遅めの演奏ですが、遅いということより長さの方を感じさせます。「古城」など、こんなに長い曲だっけと思いました。時間感覚が引き延ばされている以外は、丁寧な普通の演奏といったところ。ショルティ/シカゴ響などのオーケストラの妙技を堪能するような演奏とも違います。《禿げ山の一夜》もスコアを素直に読んで、イディオム通り素直に表現した演奏。どちらもあまりこだわった演奏でないように見受けます。

《優雅で感傷的なワルツ》でようやくラヴェルとがっぷり四つに組めたのか、伸び伸びとした良い演奏を聴かせてくれます。繊細な音色感覚やバランス感覚で、ラヴェル独特の音響を作り上げています。デュトワのような物わかりの良い演奏ではないですが、かえってその辺が魅力的。このアルバムのメインは《展覧会》ではなくこちらでしょう。

シノーポリ私的ディスコグラフィ Part 1

関連記事を検索: DG R. シュトラウス アルゲリッチ エルガー シノーポリ ツァラトゥストラはかく語りき ドビュッシー ニューヨーク・フィル フィルハーモニア管 ベートーヴェン ムゾルグスキー ラヴェル 交響曲 協奏曲 管弦楽曲

2005年2月 7日 17:21

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