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シノーポリ私的ディスコグラフィ/マーラー篇
普通こういうのは曲順に書くものでしょうが、ディスコグラフィということで録音順で並べてあります。年代による変化を追うのが目的です。

マーラー:
初期の 6 つの歌
さすらう若人の歌
交響曲第 2 番《復活》
フィルハーモニア管弦楽団、フィルハーモニア合唱団
ベルント・ヴァイクル (Br: 6 つの歌)、ブリギッテ・ファスベンダー (Ms: no.2, 若人)、ロザリンド・プロウライト (S: no.2)
'85.9 ワトフォード・タウン・ホール、ロンドン、'85.1 オール・セインツ・チャーチ、ロンドン (6 つの歌)
415 959-2 [DG]
マーラーの《復活》で 1 つだけ推薦せよというのなら、私は少し迷って、このシノーポリ盤をあげるでしょう。今でこそあまり突飛な印象は受けませんが、発売当時は、独特のテンポ感と独特の解釈で、マーラーから新しい音楽を引き出した演奏だと興奮したものです。今では一般的となったマーラーでのヴァイオリンの対向配置も、この録音が初めて採用したのではなかったかと記憶しています。独特のテンポ感を会得するべくかなり聴き込みましたが、いまだに終楽章の行進曲の部分は遅いと思うなど納得出来ない部分も無きにしもあらず (後年の日本公演の時、この部分は普通の軽快なテンポになっていましたが)。全曲の最後の音も、バンと立ち上がる変ホ長調の和音ではなく、変ホのユニゾンに収斂して終わる聴いたことのない版を使っていますが、この辺の詳細も不明 (これも日本公演では普通に変ホ長調の和音になっていた)。しかし、全体的なドラマの完成度の高さ、特に終楽章における劇場的効果や、合唱以降の幸福感や高揚感の素晴らしさなど、オペラを得意としたシノーポリだからこそ聴ける音楽があります。
カップリングの歌曲も瑞々しくドラマチックな良い演奏です。
Production:ギュンター・ブリースト、Recording Supervision:ウォルフガング・ステンゲル、Balance Engineer:クラウス・ヒーマン

マーラー:
交響曲第 6 番
交響曲第 10 番《アダージョ》
フィルハーモニア管弦楽団
'86.9 (No. 6), '87.4 (No. 10) ワトフォード・タウン・ホール、ロンドン
423 082-2 [DG]
この 6 番も凄い演奏です。ジャケットのデザインにある紫と紺の色彩のように、激しさと暗さを秘めた演奏。固くなりがちな曲ですが、シノーポリの粘着質な演奏は、そこに柔和さと色彩感を加味してくれ、器楽的な呼吸感は音楽の流れの自然さを生み出します。テンポを自在に変化させての自己主張も当意即妙で、音形とテンポと表現が合致した見事なドラマ性が出現しています。この辺まったくユニークな演奏で、こういう粘着質な音に馴染めない人は、まったく受け入れられないかもしれません。感情表現も激しいですが、決して溺れてなく、それどころか知的なバランス感覚を感じさせる優れた演奏。フィルハーモニア管の音は、繊細だったりぶっきらぼうだったりとムラがありますが、意外とそれが味を出しています。
10 番の《アダージョ》も良い演奏。ゆっくりとしたテンポで、あの 9 音和音を頂点とする息の長い大きな山を作り出しています。第 3 主題にもうちょっとキャラが付くと良いと思いましたが、変化を付けることより一方向へ深く掘り下げることを選んだ演奏のよう。自身も作曲する指揮者は、他人の手による補筆版に興味が無いというのが、この完成度でよく判ります。
Production:ギュンター・ブリースト、Recording Supervision:ウォルフガング・ステンゲル、Balance Engineer:クラウス・ヒーマン

マーラー:
交響曲第 1 番
フィルハーモニア管弦楽団
'89.2 オール・セインツ・チャーチ、ロンドン
429 228-2 [DG]
続けて出ていたシノーポリのマーラーでしたが、ここで少々間が開きます。ようやく出た 1 番はそれまでの 3 曲と比べ音楽性が変わってきています。それまでは確かにスコアを精神分析し深層心理を抉るような、痛い部分を見ないと気が済まないような演奏が多かったですが、この辺からそういうアプローチは影を潜め、音色の透明感や流れの良さを念頭にしたアプローチに変わってきているように思えます。この演奏に、それまでの 3 曲で聴かせてくれた「新しいマーラー像」を期待して聴くと肩透かしを食らわせられます。シノーポリ独特のネットリとした音楽は健在ですが、貪欲なまでの表現性は希薄になっており、わりと普通な演奏と思えます。フィルハーモニアのアンサンブルの決まりの悪さも耳に付きます。それでも 4 楽章までは、女性的雰囲気の普通に良い演奏と思いますが、終楽章が良くない。ドラマが急展開する部分の表現が急性過ぎで、まずオケが付いていっていません。特にコーダはめちゃくちゃ。あれだけテンポをいじるのなら、もうちょっとちゃんとリハーサルを行って、説得力ある演奏にして欲しい。これでは支離滅裂な印象しか受けません。マーラー指揮者でも全部の曲で良い演奏をするのは至難の業とよく言われますが、シノーポリの場合、鬼門は 1 番という事でしょうか。
Producer:ウォルフガング・ステンゲル、Balance Engineer:クラウス・ヒーマン
この項続く。
2005年5月31日 16:08
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