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矢代秋雄:ピアノ協奏曲・交響曲/湯浅卓雄 [Naxos]
ピアノ協奏曲
交響曲
岡田博美 (P)
湯浅卓雄指揮
アルスター管弦楽団
NAXOS 8.555351J
以前このレビューでご紹介した NAXOS の『日本作曲家選輯』シリーズ第 2 弾です。第 1 弾はオムニバスでしたが、第 2 弾以降はひとりの作曲者に的を絞った選曲になるようです。で早速、期待の矢代秋雄の登場です。矢代秋雄は、私が中学生の頃なぜか仲間うちで流行ってまして、《交響曲》は良く聴いてました。そして、高校に進学すると、そこの校歌がなんと矢代秋雄作曲でして、辺鄙な学校で再会したその偉大な名前に驚嘆したものです。矢代秋雄作曲のその校歌は、男声と女声の 2 部に分かれており、しかもサビの前にフェルマータまで入るという音楽性豊かな作品、指揮者無しでは歌えないという恐るべしな校歌でした。吹奏楽部でトロンボーンを吹いていた私は、毎週、矢代秋雄の作品を演奏していたことになるんですよね。私には縁深かった矢代秋雄ですが、彼の作品は《交響曲》と《ピアノ協奏曲》しか知りません。で調べてみますとそれもそのはず、彼は演奏会用の作品を 5 曲しか残さなかったようです。上記 2 作品の完成度からすると、実に勿体ない。せめてマーラー位の作品数を残してくれてればと、残念でなりません。
さて、まず《ピアノ協奏曲》ですが、例えるなら、暗く厳しい "和風" メシアンに、バルトークの鋭さとプロコフィエフのスパイスを利かせたような作品。第 2 楽章は一定のリズムパターンの執拗な繰り返しの中で展開されていきますが (プロコフィエフのピアノ協奏曲を思い起こしますね)、これには作曲者が幼少の頃高熱にうなされ悪夢の中で聴いたリズムというエピソードが付いており、そのためこの作品の中でも緩徐楽章が特に有名のようです。初演者の中村紘子のピアノによる '77 (若杉弘/都響) と '82 (外山雄三/N 響) の 2 種類の演奏がカップリングされている CD を持っていますが、スマートでよりメシアンっぽい中村の演奏も魅力的ですが、この NAXOS 盤で聴かれる岡田の骨太で力強い演奏も素晴らしいです。録音の善し悪しも影響しているのでしょうが、オーケストラも NAXOS 盤のアルスター管の方が全体にまとまりある演奏で、曲のエモーションを的確に伝えています。パッと聴きの印象では若杉/都響の切れのある過激な演奏が面白く聴こえますが、NAXOS 盤をじっくり聴き込むと、この曲の行間の豊かさを認識できる演奏だと思えることでしょう。
《交響曲》は、矢代がパリ留学から帰ってまもなく、29 歳のときの作品ですが、若書きの稚拙さは微塵も感じさせない緻密な作風の曲です。ストラヴィンスキー的で、かつ、当時の日本の管弦楽作品によく聴かれる "暗さ" をたたえた曲です。この曲は Fontec から CD が出ていたと思いますが、私は持っていません。私の中学時代の記憶の底にあるこの曲の演奏 (たぶんエアチェックだったと思います) は湯浅の演奏よりも派手で、4 楽章冒頭の笛の音やホルンのグリサンドなどはもっと強烈だった印象があるのですが、湯浅の演奏にはそこまでの演出性を感じられず、物足りなく感じたのは事実です。しかし全体的な密度は濃く迫力も十分、まとまりも見事なので、満足できる演奏だと思います。録音も自然でエネルギー感もしっかり入っており、空間表現も音の肌理も十分です。この点でも既存の CD より優れているんではないでしょうか。記憶の残滓にいつまでもしがみついていても仕方ないですし、そういう印象は徐々にバイアスが掛かってくるものですから、今もし同じものが聴けたとしても大した演奏と思わないかもしれませんしね。
正直言いまして、シリーズ第 1 弾ほど感銘は受けなかったのですが、矢代秋雄の CD としては最高のレベルであることは間違いないでしょう。しかも 1,000 円、お店によっては 700 円台で買えるんですからね。近現代の作品に興味のある人なら買っても損はないでしょう。最初は取っつきにくいかもしれませんが、この時代の鑑賞歴の長い人なら、きっと面白さが判ると思います (つうか、近現代好きには説明不要という話もありますが ^^; )。
2002.3.28
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2002年3月28日 11:29
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