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芥川也寸志:《エローラ交響曲》他 (Naxos)

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芥川也寸志:
オーケストラのためのラプソディ (1971)
エローラ交響曲 (1958)
交響三章 (1948)

湯浅卓雄指揮/ニュージーランド交響楽団
Naxos 8.555975

 Naxos の「日本作曲家選輯」第 9 弾の芥川也寸志作品集です。芥川也寸志の作品を年代でみると、伊福部昭やロシア(ソヴィエト) 音楽の影響色濃い第 1 期、黛敏郎や武満徹のような前衛的な作風を示す第 2 期、第 1 期的な明瞭で活き活きとして力強い音楽に回帰する第 3 期と 3 つに分けられるようですが、この CD ではそれぞれの時期から 1 曲ずつ取り上げられています。超有名な《絃楽のためのトリプティーク》や交響曲第 1 番のようなメジャー作品は選曲せず、ややマイナーな作品、それでも芥川を語るには欠かせない曲を選んでいるのが、このシリーズのミソでしょう。

 まず《オーケストラのラプソディ》が珍しいです。私は初めて聴きましたが、全体的にどこか聞き覚えのある旋律が多い曲です。オスティナート主題は最初《ファウスト交響曲》かと思いましたが、オスティナートの形が見えてくると『ナウシカ』の戦闘のときに流れる音楽のよう (^^;。ストラヴィンスキーの《うぐいすの歌》も顔を出します。子守歌の旋律も元ネタが思い出せませんが、どことなく何かに似ている。形式も緩−急−緩−急と判りやすい展開ですし、前衛的な手法を要所要所使いながらも映画音楽のような聴きやすい音楽です。

 演奏は、アッと驚くようなものはないですが、そつなくまとめてあり、聴き応えも十分です。後半のアレグロ・オスティナートの再現部分はドミナントの雰囲気が強く、まだまだ続くというのに常にコーダの焦燥感を感じさせたままばく進していくように聴こえます。この部分は様々な音楽的なアイディアが詰め込まれているようなので、もうちょっと起伏を付け各部を明確に描き分けられれば、さらに劇的な展開が望めそうだと思いました。

 この CD の白眉はなんといっても《エローラ交響曲》でしょう。黛敏郎風の濃密な音響世界と野蛮で暴力的な活力漲る音楽。《春の祭典》の第一部後半を大きく発展させたようなこの作品は、プロコフィエフ的で健康的な芥川しか知らない人にとっては衝撃でしょう。ライナーノートの片山杜秀氏による解説が秀逸で、作曲者が意図したものがようやく判りました (なぜ今までの CD にはこのことが書いてなかったのだろう)。これを読んでしまった御陰で、自分の言葉での曲解説は不可能となりました (^^;。要約しようとしてもほとんど全文引用になりそうなので、やめます。CD のトラックが細かく振られているのもポイント高いです。

 湯浅の演奏はパワフルで、音響的な効果を十二分に発揮したものとなっております。なるほど確かに「爆発系サウンド」。新響との自演盤も味かあって良いですが、プロオケの安定感や底力はやはり聴いていて安心できます。残念ながら私はこの演奏から性的なものを感じ取れませんでしたが。  《交響三章》は演奏したことがあるので、個人的に思い入れのある作品。〈カプリッチョ〉−〈ニンネレッラ (子守唄)〉−〈フィナーレ〉の 3 楽章から出来ており、伊福部などの影響が色濃い、若々しい作品です。演奏する方からするといろいろと問題のある作品で、楽譜通りのダイナミクスで演奏するとバランスのとれない部分があったり、フレーズも非常にやりにくい部分で分かれていたりしており、その辺をどう処理するのかも関心どころ。つまり楽譜の指示を守りつつも面白い演奏にするには、かなり周到な解釈を広範囲に徹底して行わねばならないということです。モーツァルトやハイドンなど古典の作品に取り組むのと同じ気概が必要かと思います。

 と細かい部分を聴こうと思っていたのですが、結構厚ぼったくて大ざっぱな演奏でした。2 管編成なのにこのスケールの大きさはなんだろう。流石なもので 2 楽章など『ロード・オブ・ザ・リング』並みです (^^; (註:同じオケの演奏です)。録音もこの曲は響きすぎで分離が悪く、細かい部分の動きが聞き取りにくく、主旋が埋もれることもあるので、積み木のように様々なブロックが整然と積み重なって出来るべきものが、ただのてんこ盛りになっているよう聴こえます。それでも曲の雰囲気は十分描出出来ており、ショップの店内で聴いたときは凄く良い演奏のように聴こえましたので、あまり構造的なことを考えずに聴けば (構造的な部分が聞こえない装置で聴けば)、勢いや雰囲気のあるかなり素晴らしい演奏として聴けるでしょう。

 2002 年 1 月、ニュージーランド、ウェリントン、ロワー・ハット・タウン・ホールでの録音。《交響三章》以外は音場感も良く音像もはっきりした録音で文句無いです。最近の Naxos の録音は安心して聴けます。

 このシリーズで再び芥川が取り上げられるかは判りませんが、交響曲第 1 番や《トリプティーク》も是非とも聴いてみたいですね。やや辛口の評価をしてしまったかもしれませんが、この手の曲が嫌いでない限り買って損したとは思わないでしょう。十分満足できる CD です。この音楽業界の不況下、衰退の一途を辿るメジャーレーベルが取り上げるとは思えない曲ですし、お国ものだからといって国内レーベルにも期待はまったく出来ません。よって、現在まともなものが聴きたかったら Naxos をチョイスするしかない訳です。昔のように安かろう悪かろうではなく、安くて質の良いものを提供してくれているのですから。

2004年8月 5日 12:08

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トラックバック時刻: 2007年1月 6日 08:58

コメント(1)

渡辺さん、あいかわらず健筆ですね。
たくさん書かれたもののなかから、興味のあるものだけ拾い読みして、ストレートな切れ味のいい文体が、とても印象的です。
私にはわからない部分が多いにもかかわらず、読んでいて気持がいいから、読んでしまいます。やはり、ご自分で演奏をしておられる方の書く文章だということもあるのでしょうか、演奏の現場に連れていかれたような、臨場感があります。

シノポリのマーラーで2番を推挙しておられるのに賛成です(外面的な感傷性を感じさせないのは、彼の指揮姿と同様かと思います)。

 ノリントンやシノポリの悲愴なんて、是非聴きたいですね。

 ブルックナー3番で、ティントナーを推薦しておられるのは、嬉しいです。この曲を聴くと、8番、9番のいかにも宗教的ムードのある作風にむしろ抵抗を感じるようになりました。私にはブルックナーの曲のなかで3番が一番賛成できる曲かもしれません。フィナーレの、前の3楽章の回顧は、ぜひ必要なものだと思います。ティントナーはブルックナーのほかの曲ではあまりいい演奏をしていないと思いますが、3番はいいと思いました。ただ、第1楽章のtuttiの箇所は、もっとすっきりと整った鳴らし方ができるのではないかと思いますが。
 ケント・ナガノのものも是非聴いてみたいものです。

 湯浅さんとニュージーランドの芥川で、ラプソディ、エローラはよいと思いましたが、交響三章は、飯守泰次郎と新響のに比べて劣る気がします。いうまでもなく、録音と演奏技術は前者のほうが上ですが、たとえばカプリッチョの途中で出てくるピアノの間合いだとか、その前後のバイオリンのリズムのテンポの上がっていき方だとか、ニンネレッラの中間部の歌の心の込め方、そして、フィナーレ・・・湯浅さんのを聴いているとくどい繰り返しに聞こえるものが飯守さんのものでは、変化があって退屈しません。飯守さんの歌声が聞こえるのも好きです。

 今後もこのHPをいっそう充実させてください。

投稿者 萩谷 良 : 2009年10月 1日 23:45

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