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R. シューマン:交響曲全集/ジンマン [ARTE NOVA]
交響曲全集 (1〜4 番)
デイヴィッド・ジンマン指揮
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
ARTE NOVA 82876-57743-2
2003 年 10 月 13-16 日、チューリッヒ、トーンハレにて録音。
ジンマンというと以前はバーバーの第 1 交響曲の名録音が私の記憶に留まっていましたが、最近はオネゲルや R. シュトラウスの管弦楽曲集でもなかなか良い演奏をしていました。どことなくノーリントンと区別が付かないところもありますが (^^;、基本的にはロマン派から現代まで幅広く手がけている指揮者ですね (一時期ブームになった「グレツキの 3 番」もジンマンの演奏ですし、…持ってませんが)。
ジンマンは以前ボルチモア響とシューマンの交響曲全集を録音していたようなので、今回の録音は 2 度目ということになります。ボルチモア響のときはどうだったか知りませんが、今回はピリオド様式での演奏です (ピリオドって何となく理解していますが、具体的にどう弾くのがピリオドなのかよく判りません ^^;)。トーンハレ管は特に古楽器オケという訳ではないのですが、今回は金管には古楽器 (ナチュラル・ホルン、ナチュラル・トランペット、バロック・トロンボーン) を使用しており、モダン・オケによるピリオド奏法が流行る昨今、一歩踏み込んだこだわりを見せています。弦もフルより若干プルト数が少ないようです (曲によって増減していますが)。
シューマンの時代は、金管 (ホルン) にバルブが搭載され大幅に改良される過渡期に当たっており、交響曲 3,4 番では、ナチュラルとバルブが併用されて書かれています。この録音でもナチュラルとバルブを併用して演奏するなど歴史的な事情を踏まえた楽器選択がなされています。またシューマンの重ねすぎのオーケストレーションでは、現代の金管では音が大きくなりすぎるので抑える必要があるのですが、大きな音を出しにくい古楽器の金管なら、無理に音を殺すことなく伸び伸びと吹奏してちょうど良くなる訳で、そういう実際面での選択も働いたのでしょう。
と、以上は一般論でして、ジンマンの演奏を聴くと、確かに弦と木管が音響の主体となり、金管はスパイスとして巧く機能しているようです。目立つ部分もしっかりしており、第 1 番冒頭のファンファーレなど大変綺麗ですし、吹き込んで割れた音もバランス良く聴こえます。しかし第 4 番のトロンボーンなど、もうちょっと力量感が欲しいと思う部分もあります。さらに、金管が引っ込んだことで、ただでさえ音色の変化に乏しいシューマンの音楽がよりいっそうモノトーンになり、ダイナミクスの幅も減り、単調になったと思えます。ガーディナーのように完全な古楽器オケの演奏だと、室内楽的に見通しが良いのでそういう問題は表面化しませんが、ジンマンのオケはその点に関して中途半端な印象を受けます。演奏もピリオドの利点である粒立ちの良さ (特にティンパニ) はありますが、ピッチを A=435 Hz とかに落としている訳でもないし、ビブラートも案外かけているようなので、ピリオドとは時代様式の再現ではなくもはや演奏テクニックのひとつという感じです。
演奏は、甘ったるい部分の一切無いシューマンです。ロマン派というより古典派のようながっちりした演奏で、構成感や構築美といった純交響曲的な要素の強い、揺るぎない音楽を作り出しています。第 1 番ではそのような演奏スタイルが曲とマッチして、切れ味の良い躍動感ある演奏になっており、素晴らしい音楽を聴かせてくれます。しかし 2 番以降は、ピリオド奏法による演奏の切れの良さにもかかわらず、音楽は停滞気味で単調な印象を受けます。ロマン派としての文学性、物語性、心象風景、何でも良いですが、そういったドラマ性が曲を軋ませ、古典的な枠からはみ出して行く様を聴かせて欲しい、というかジンマンの狙いもそれだったのではないかと想像するのですが、ロマンティックな演奏に慣れている耳には、古典的な面だけが印象に強く残りました。もうちょっとロマン的に大胆な部分も垣間見させてくれれば素晴らしい演奏になったと思うのですが、シューマンの音楽に麻薬的な刺激を求める私はまだ若いのでしょうか。
ピリオドとモダン、古典とロマン、この転換期におけるまさに境界線上を狙ったような演奏ですが、私の耳にはそれが中途半端な演奏に聴こえました。厚ぼったくてまったりとしたシューマンよりは何度も聴きたくなる演奏ですが、初めてシューマンを聴くという人にはお薦め出来ないかなというところ。初めての人には、もうちょっとシューマン印の媚薬入りの演奏が合い相応しいでしょう。ピリオドの面白さを求めるならガーディナーの演奏をどうぞ。シューマン通の人には、こういった「永谷園の鮭茶漬け」のようなサラッとしていながらも美味しく飽きの来ないシューマンもまたオツなものかと思います。
2004.4.15
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2004年4月15日 11:29
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