カバーページ | スチームボーイ »

「何様のつもり」〜フォーンブース

phonebooth.jpg  フォーンブースを観ました。予告編で観たときは、電話ボックスにいる主人公と、その主人公に狙われていると思っている群衆 (通行人) との物語なのかと思っていました。つまり狙われて動けないのは主人公だけでなく群衆も同じで、主人公と犯人のやり取り次第で群衆のうちの誰かが殺されていく。群衆からみれば主人公は共犯者であり、見えない狙撃犯よりそこにいる主人公に敵意を抱いていく。そういう話しではなかったですね (^^;。

 想像とは違いましたが、この映画はなかなか良かったです。ヒッチコックの『裏窓』や『ロープ』のような、限定的な空間で語られる演劇的なお話ですが、基本的にカメラは電話ボックス周辺を離れることが無いまま、上手く緊張感を持続させることに成功していました。

(以降ネタばれ含む)
 電話ボックスとその周辺しか写すものがない訳なので、画面が単調になりそうなものですが、様々なカメラアングルと編集の巧みさで、単調な印象はまったくありません。

 基本的には主人公スチュの視線を追った一人称カメラとその反対側からスチュを捉えた状況説明ショットの積み重ねで出来ており、スチュ以外の状況を見せるときでも、画面を分割してまでスチュを見せ続け、観客の関心が一時もスチュから離れないように作られています。

 が例外も多く、主人公の奥さんや浮気相手と電話するシーンでは、相手が電話を取る瞬間に 1 カットだけ電話ボックスからカメラが離れます。一瞬ですがこれはインパクトあります。彼女たちの存在が鮮やかに映画の中に割り込んできます。また映像にメリハリをつけるのに役立っているでしょう。すぐにスチュ中心のカメラになるので、観客とスチュの共時感は損なわれません。

 他にカメラがスチュから離れるのはレイミー警部周辺の会話シーンと、犯人の目線であるスコープ内の映像。ただしこれらはスチュが退っ引きならない状況に追い込まれたことが十分に描かれてからのことで、徐々に事件が大きくなっていくと共に挿入されるものです。この辺の状況の膨らませ方と、それの伝え方は上手いなと思いました。

 メイキングで、ラスト近くでのスチュの自己懺悔の撮影風景が 1 カット分まるまる納められていますが、これと本編を見比べると、カットインによる間合いの調整やモンタージュの仕方など、編集の巧みさを実感できます。この手の映画は編集で生き死にが別れるでしょう。

 冒頭のスチュとその弟子がマンハッタンを歩くシーンは、『北北西に進路を取れ』の冒頭シーンを思い出しました。あの物語も主人公は広告マンで、秘書に母親へメッセージを届けろとか、最近太ったから机に "減量" のメモを置けとか、スチュと同じような指示を秘書にしていました。『北北西に進路を取れ』のソーンヒルはその後犯人の濡衣を着せられ、アメリカをまたにかけた大冒険に旅立ちますが、スチュは電話ボックスに閉じ込められます。

 この映画の問題点は、最後に犯人が出てくることの是非でしょう。私の好みとしては、最後の『羊たちの沈黙』のようなドリーショットに、はっきりと犯人を収めるべきではなかったと思います。それ以前のスチュの朦朧とした主観ショットだけで、真犯人がピザ屋ではなかったことは伝わりますし、ひょっとしてスチュの幻覚なのかもという含みを残しておくのもいいのかと。最後のドリーショットは、なんとなくそれっぽい人影が映る程度が、犯人の (スチュと対をなしている) 非現実的な特性を強調していいと思うのです。ま、監督は犯人にもちゃんとした性格付けをしていたようですが、映画からは嘘で固めた匿名性しか伝わりませんでした。

 あと、疑問点なのですが、犯人はどこにいたのか。警察の特殊部隊が踏み込んだとき、ピザ屋は虫の息だったし (死んではいなかったらしい)、電話ボックスの電話を取って警部が「報告しろ」というと、その回線はちゃんとピザ屋のいた部屋と繋がっていたということが示されています。ということは犯人はやはり直前まであの部屋にいて、拘束しておいたピザ屋の首をかっ切り、拘束を解いて証拠隠滅し、スチュと話をしながら秘密の抜け道を通って逃げたのか? もともと犯人は違う部屋にいて、ピザ屋は既に殺害されていたというなら逃げるのは容易いでしょうが、状況と違ってきます。電話だけなら無線で飛ばすなどトリックは可能でしょうが、さすがに死後数時間の死体と自殺直後は一目で見分けられてしまうでしょう。

 いずれにせよ、コンパクトにまとまった面白い映画でした。ま、自分で買うよりは、レンタルで十分という感じではありますが。ちなみにこの記事のタイトルは電話ボックスの背後にあったでかいポスターに書かれていた言葉です。

2004年7月21日 11:23

この記事はどうでしたか? Bad ← 1 2 3 4 5 → Good
評定平均:(3.0) 投票人数:(431)

ソーシャルブックマーク:

カバーページ | スチームボーイ »

トラックバック

CAPTCHA
トラックバックスパム防止のため、末尾の XXXXXXXXX 部分を上記画像の数字に置き換えてからご利用ください。お手数ですがご協力よろしくお願いいたします。

トラックバックが反映するまで時間がかかるかもしれませんし、エラーが出ても受け取れているかもしれません。重複トラックバックはこちらで削除しますので、特にコメントは不要です。

このリストは、次のエントリーを参照しています: 「何様のつもり」〜フォーンブース:

» 「フォーン・ブース」 from HappyDays
[story]スチュは自称一流のパブリシスト。傲慢で嘘をつくことをなんとも思わない、高価なスーツに腕時計(実は偽物)が頼りの、軽薄なギョーカイ人。今日もアシスタ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年3月 7日 14:48

コメント(0)

コメントがありましたらどうぞ

メールアドレス・URL は必須ではありません。
コメントは管理者が承認してからページに反映されます。 もしページへの表示を望まない場合は、その旨一筆添えて下さい。削除は管理者へ依頼して下さい。