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5.1ch のリアは、本当に小スピーカーで良いのか?

 ホームシアターを構築する際に、気になっていたことがありました。

 それはセンター・スピーカーやリア・スピーカーはどの位のスペックのものが必要なのかということ。専門誌やその手の情報を扱っているサイトを見ても意見はかなり違う。私は、全て同じスピーカーで揃えるのが基本だろうと考えていましたが、「全て同じスピーカーで揃えるということはナンセンス。リアは基本的に間接音を作り出すものだから、小さいスピーカーでさり気なく鳴らすのが良い」などといった意見も見ます。

 当初の考えは、リアスピーカーは包囲感や音空間を広げるのが目的で、それは中高域が重要であろうと思いました。どの位までの低域が再生できれば良いのか悩みましたが、サブウーファーもあるのだから、低域の信号はあまり入っていないだろうと考えました。もともと入ってない信号のためにでかいスピーカーを用意するのは、確かにナンセンスかも知れないです。

 私の家では、リアスピーカーに大きいのは置けないという物理的な制約から、ミニスピーカーを自作して設置、それでも十分な効果を得られたとは思っていますが、それでもその疑問は解決していません。で、個々のチャンネルにどんな信号が流れているのか実際に調べてみようと思いました。

 一番簡単なのは、AV アンプのリア出力にメインスピーカーを繋いで聴く方法ですが、AV アンプをお持ちの方はご存じでしょうが、端子部の空間に余裕が無いためスピーカー線を繋ぎ変えるのはかなり面倒なのです。それにこの方法では聴いた印象でしか判断できません。

 こうなったらソフト的に何とか出来ないかと色々探すと、a52decX というソフトがありました。これは VOB ファイル (DVD の動画ファイル) から各音声チャンネルを aiff として吸い出せる機能が付いています。今回はそれを使用、各チャンネルを aiff に変換して、フロント 2ch、センター、リア 2ch、LFE の計 4 つの aiff を作成 (フロントとリアは L,R のモノ音声を合体させ 2ch ステレオ化。ステレオとしての音場感も聴いてみたかった)、一旦 CD-R に焼いて(*)、自作のスペアナソフトで f 特を見てみました。

(*) 自作のスペアナソフトは、CD や外部入力の信号しか測定できないもので。

 サンプルとしたソフトは『スターウォーズ Eposode I』のチャプター 44 (アナキンが敵の司令船を内部から破壊し脱出するところ) と『ロード・オブ・ザ・リング〜王の帰還 SEE』の Disc 1 チャプター 15 (フロド一行がミナスモルグルの前でオークの出発に出くわすところ) の 2 つを見てみました。

紺色はピーク、明るい色はそれだけ出現時間が長いことを意味する

スターウォーズ Eposode I
SW-center.gif センター:
驚くことに最もワイドレンジ。エネルギーも大きい。中高域の伸びは主にセリフによるもの。このチャンネルはセリフと効果音主体で、セリフがある部分では効果音が抑えられ音がかぶらないよう設計されていました。

SW-front.gif フロント:
音楽と効果音が主体のチャンネル。ちょっとはセリフが聞こえるかと思いましたが、セリフはほとんど聞こえません。センタースピーカーがないので、かなり中抜けの音場になっています。

SW-rear.gif リア:
全体的には音圧は押さえ気味ですが (黄色い部分が少ない)、直接音の効果音はフロントと同じレベルで入っています (紺色のピークは大きい)。低域もかなり入っています。音楽は残響音風。

SW-LFE.gif LFE:
唸りや地響きのような何の音なのか特定できないサブソニック。それでも音の表情はシーンに合わせて変わるのは判ります。

ロード・オブ・ザ・リング〜王の帰還 SEE
ROTK-center.gif センター:
こちらも最もワイドレンジで音圧も大きいです。やはりセリフと効果音主体で、セリフがある部分では効果音が抑えられ音がかぶらないよう設計されていました。

ROTK-front.gif フロント:
音楽と効果音が主体。ゴラムがオフセンターの時などでセリフか入りますが、それほど大きくはありません。こちらも音場は中抜け。

ROTK-rear.gif リア:
『スターウォーズ』より積極的に鳴っています。音楽はかなりはっきり聞こえます。ナズグルの鳴き声はリアの方が遙かに大きい (1k 以上の盛り上がりがそれ)。我が家では部屋を満たすように鳴り響きますが、本当は背後から背筋に抜けるような金切り声なのかもしれません。オークの行進のドラムはリアのみでボスボスと乾いた低音が鳴っています。小さいスピーカーではこの音の効果は半減でしょう。

ROTK-LFE.gif LFE:
音楽のベースも若干入ってきますが、基本的にこちらも何の音なのか特定できないサブソニック。

 以上、リアがフロントより全体としてのボリュームは低めですが、突発的に入る効果音はフロントと同等のレンジで使われています。これは突発的にしかリアが鳴らないということではなく、レベルは低いですが常に音楽とか環境音が鳴っています。レンジが狭いこともありません。もちろん作品によってサウンドデザインが違うので例外もあるでしょうが、少なくともリアスピーカーはレンジが狭くても良いということはないようです。それに指向性の広い方が良いという考えもありますが、これはサービスポイントが広くなる、設置位置の自由度が上がるというメリットしか考えられず、音響上の理由はないでしょう。リア L,R だけでもステレオ音場が立派に形成されるので、フロントと同等に考えるべきです。

 勿論これは理想論でして、リアの音量もフロントより抑えられているとはいえ、それでも ITU の勧告通り全スピーカーとリスナーの距離は同じとして作成されている訳です。現実的にはリアはリスナーの近くで鳴ることになるので、リアのバランスが上がってしまうのは明らかです。それで、スピーカーの中心軸を直接リスナーの耳に入れないようにして、指向性の広いスピーカーでカバーしようなどという発想が生まれるのでしょう。しかしそれでは音質面ではベストではありません。定位も悪くなります。スピーカーはきっちりとリスナーに向けて、音量のバランスをアンプで調整するのが良いと思います。ちゃんと鳴らせていれば、音はスピーカーから離れていきますので、後方にステレオ音場が形成されるはずです。それには出来るだけハイスピードなスピーカーが理想的。ナローなスピーカーなら、かえって不自然になる危険はあるでしょう。

 結論としては、リアもフロントと同じスピーカーを使うべきです。それもしっかりとしたフルレンジでハイスピードのものが必要です。ついでに言うとセンターは特に重要です。フロントチャンネルだけではかなり中抜けな音響になっています (リアは中抜けしていません)。センターはセリフが聞こえれば良いというものではなく、それが無いと左右の繋がりにも影響します。5.1 ch とはセンターがメインで、それ以外はサラウンドチャンネル (サブウーファーは味付け) という認識がもっとも現状にかなっていると思います。

 などとのたまっていますが、我が家のシアターは改良の予定は無いです…。

 音楽ソフトはまた違う音作りになっているかもしれません。それはまた今度試してみたいと思います。

関連記事を検索: 5.1ch サラウンド スター・ウォーズ ロード・オブ・ザ・リング

2005年5月18日 11:41

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